(きたばかりの先生なんだ。んー、怪しいと言えば怪しいけど、どうなんだろう?)
……中等部の三輪ミズチだよ。
(ちょこっとだけ頭をさげ、じっと三上百合花をみつめるが、見た目からは怪しいところは見つけられなかった)
(三上百合花から視線を外して教室の窓の方を見る。高等部の校舎へ来たのは授業が終わった午後3時くらいだったが、)
(窓の外は暗くて月明かりだけが教室の中を照らしている。しかし、黒板の上にかけられた時計の針は3時を指していた)
くちゅんっ! ん……あれれ?
(寒さでくしゃみがでて、鼻を押さえようとして自分の格好に気が付く)
(制服の上にコートを着ていたはずなのに、コートを着ていなくて、しかも半袖の制服だった)
(ミズチの知らない制服。何十年も前に高等部で使われていたオーソドックスなセーラー服の夏服だった)
(新任の百合花も知らない制服だが、胸の校章は間違いなくこの学園のものだった)
【芸能活動をしている生徒が中等部にいて、それがミズチだというのを知っているかどうかは先生にお任せね】