んぐんぐ……んぐ、おかえり。
どうやって?
ベランダから這い上がってるのさ。
あんただってその気になれば同じことできるだろ?
(勝手知ったるなんとやら。その日、霧原朱音は渡辺総司の部屋に勝手に)
(入って、勝手にピザを注文して、リビングで寝転がって食べていた)
(朱音の能力なら、ベランダから這い上がってロックを解除して侵入するのも楽勝だ)

冷蔵庫の中身が空に近かったからね。
インスタントって気分でもないし。そもそも自炊とかしないし。
ん?なんだ、スーパー銭湯にでも行ってたのかい?
まあいいさ。腹が減ってたらどうぞ。ジャーマンピザだけど。
(指を舐めつつ、鼻を僅かにひくつかせる。総司から石鹸かボディソープの匂いがした)
(髪も微かに湿っているように見受けられる)
(まさかJCとギシアンハッスルしていたとは思わない)


あはは、くっだらね!ははは。
この番組、毎回くだらないこと真剣にやってるよね、あー、腹痛い。
(テレビ画面は、バラエティ番組を流している。頭を空っぽにして楽しめる内容だった)
(この男との付き合いは、そう長くはないが、今では勝手に家に入るくらいの)
(関係になっている。ちなみに朱音が勝手に押しかけているだけだ)
(以前、不覚を取るところを助けてもらい、身の上話を根掘り葉掘り聞いている)
(両親を失ったこと、意志を継いで戦っていると、既に復讐は終えていること……)
(それに対して同情するでもなく、朱音は餌付けされた野良猫くらいの気軽さで)
(総司の部屋に上がり込む。いつも他愛のない話をするだけで、肉体関係はない)

ところで、ソウジ。なーんか変わった事件とかない?
変わった人間でもいいけどさ。つーか、仕事なら言えよ。
暇だし手伝ってやるって言った気がするんだけど。
(朱音が打ち明けたことと言えば、水を扱う異能者であることと、家にはちょっと帰り)
(づらいことくらいか。他に話すことがあるわけでもない。しかし楽しい話なら興味はある)
(スカートのまま胡坐をかいて、さあ隠しごとは無しだと言わんばかりの態度である)

【ああ、そんな感じで頼むよ】