>>216
………んぇ!?
(ぼーっとしていた千歳は、主人の声で我に帰った)
(千歳は舞台の脇で今まさに出ていこうとしている時だった)
…あ…あい……?
(両手をニギニギして、自分の体が動くのを確かめる)
…うん、動く…よね?
(またも感じるモヤモヤした感覚に、千歳は首をかしげた)
(でも深く考えている余裕はなく、千歳はいそいそと舞台に出ていった)
みんなぁ、おっまたせぇ♪
(足下をふらつかせながら、千歳は音楽に合わせて踊り始める)
わわ…っと…とと……
(危なっかしい足取りで、それでも踊りをこなしていく)
(客たちはというと、千歳の危なっかしい振り付けも演出に見えているらしい)
(踊り続ける千歳に、様々な声援を送ってくれる)
ふわ…あはっ、ありがとー♪
(なんとか踊り続けているうちに、声援に応えるくらいの余裕が出てきた千歳)
(にこやかに笑顔を返し、小さく手を振ってアピールしたりしている)
(もちろん、激しく踊ればそれだけ酔いが回ってしまうから、足取りはさらに怪しくなっていく)
(でも勢いと根性で最後まで踊りきり、千歳は満面の笑みで客たちに何度も礼をする)
……うぇっ……ぎ…ぎもぢ、わるいぃぃ
(舞台の脇に戻ったとき、千歳は歩くこともできずにへたりこんでしまった)

(それから、主人に手伝ってもらって部屋に戻ったことまでは覚えている)
(でも記憶があるのはそこまでで、目が覚めたとき、千歳は舞台の衣装のままベッドに倒れていた)
……あれ……ぼく…あ゛い゛だぁ!
(起き上がって周囲を見ていた千歳が、頭を押さえて呻く)
あ、頭…い、痛い……こ、これって…?
(言うまでもなく、生まれて初めての二日酔いになってしまった千歳だった)
(ねぎらいながら話しかけてくる叔父さんに、千歳はちょっと涙目になりつつも小さく笑う)
もうやだ…っていいたいけど…でも…叔父さんになら、いいよ…?
気持ち悪くなるのはちょっとやだけど…叔父さんが飲みたいなら…いっぱい、飲んでもいい。
(そう言えるのも、叔父さんに告白された影響だろう)
(好きな人のために、その人が望むなら尽くしてあげたいという女性的な考えが身に付き始めていた)