(夏のとある日)
(夏休みの登校日を終えた千歳が友人と歩いている)
(半袖のシャツから出た少女のような華奢な腕は、夏らしく日焼けしている)
(日焼けのせいなのか、いつもは内気そうな千歳も何となく開放的に見えた)
(友人のからかうような冗談に小さく苦笑いしながら、千歳は遊びの誘いを断って歩き始めた)
(制服姿だけを見れば、千歳は間違いなく男だ)
(でも男というにはあまりにも華奢な身体と、普通に少女と間違われそうな顔つき)
(通っている学校では、その佇まいからかなりコアな人気がある千歳だった)
(千歳自身自分の人気の噂を聴くことはあるけど、ほとんど興味を持っていなかった)
(何故なら、千歳は学校の人気など気にならないほど、べつの事に夢中だったから)
(そして千歳はいま、自分を夢中にさせてくれる人との待ち合わせの場所に向かっていた)
(駅から少し歩いた場所の公園のベンチに、その姿を見かける)
(見た目は千歳と何の関わりもなさそうなスーツ姿の男性)
(少し広い額と小太りの体型という、いかにも中年という感じの男性に向かって歩いていく)
(近づいてきた千歳に気づいたのか、顔を上げて手を挙げる男性)
こ、こんにちわっ。
(顔が赤いのは走っていたからではなく、興奮してきているから)
(男性に前髪を整えられながら、千歳の顔は自然と上気してしまう)
うん、別に走ってないけど…んむぅ!?
(千歳の次の言葉は、男性の突然のキスで塞がれた)
んっ…じゅるっ…んんっ、んっ…じゅる、じゅるるっ…!
(強引に口を割った男性の舌が千歳の舌に絡みつく)
(反射的に千歳も男性の舌を吸い、そのまま唾液の交換を始めた)
(背中に感じる、通行人の奇異の視線)
(今の千歳は男の姿だから、通行人に男同士のキスを公然と見せている事になる)
(そしてそのことに、千歳はこの上ない興奮を覚えていた)
(瞬間的な、でも深いキスを終えて男性は千歳の肩を押しながら話してくる)
うん…お母さんには友達と泊まってくるって言ってあるよ。
だから…んあひっ!
(尻を触られながら、千歳の瞳が艶かしく潤む)
だから…は、ぁひっ…たくさん、イイことできるよ…栄治、さん…
【待たせちゃってごめんなさい!】
【おじさんの呼び方だけど、栄治さんでいい?】