(先ほどまで戦っていたオークの化け物だと分かると、ようやく今の状況を理解したのだろう)
(ただ腕と足は拘束されているから、顎をつかまれても振り払う事は出来ない)
償い? ふざけないでよ、あんたなんかこんな状況でも倒してあげるんだから
このっ! 気持ち悪い舌でなめないで!
(見えないためか、その舌の粘着質な感覚がより彼女に伝わってくる)
(だが、気色悪さに彼女が屈することは今はなかった)
このっ! バカにしないでよ!
(そういうと、彼女の口が何かしらの呪文を唱えようとしている)
(おそらくは単純な身体強化と体にまとう炎の呪文。この鎖を焼き切ってぶちのめすものだろう)
(だが、それを唱え始めた瞬間に)
あがっ! んー!
(唐突に口に何かをはめられた)
(口を閉じることができず、しゃべることができない)
んんんー!!
(どうにか顔を左右に振って抵抗するがベルトで固定されたそれは、振っただけでは外すことなど不可能であった)