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ふむふむ……海魔の駆除……海魔ってタコ妖怪みたいなものでしょうか……。
報酬は……えっ、温泉一週間無料!?、これこそまさに私向けの依頼です!、これは是非参加しなくちゃ!。

(冒険者ギルドで最初に提示された、海魔駆除の依頼内容を閲覧していたサヤは、報酬欄に書いてある内容に目を輝かせる)
(温泉一週間無料利用……その言葉は温泉に目が無いサヤにとっては抗いがたい魅力である)
(すぐさまギルドで参加申請をしたサヤは、善は急げとばかりに温泉へ……もとい、依頼主が待つ現地へと向かった)

「それじゃあよろしくお願いします、一応しばらくしたら、様子を見に行きますので……」
はいっ、任せて下さい!。

(海魔が出没する川辺の近く、見張りの為に用意された小屋に待機していた依頼主からサヤは詳しい話を聞く)
(サヤの想像通り、海魔はタコに似ているそうだが……吐き出すのは黒いスミではなく、白い粘液だという)
(海の生物が身を守る為に粘性の液体を排出するのは良く聞く話である為、サヤは白い粘液に疑問も抱かずに……)

まぁ、黒い墨も白い液も大して変わらないよね、それくらいならきっと大丈夫♪。

(……と、完全に楽観視して、依頼主と別れたサヤは、意気揚々と海魔が巣食う川辺へと進んでいく……)
(綺麗な水が流れる川辺をしばらく歩いていると、問題の海魔が6匹も蠢いている群れをサヤは発見した)

うわわ、思ってたよりも大きい……私よりもでっかいのも居る……でも、ダメージを与えるのは簡単って話だし……よし!。

(見つけた海魔の大きさと数に若干怯みながらも、サヤは海魔の群れの前に姿を現した)
(……そんな事をせずに奇襲を仕掛ければ良いのだが、実戦慣れしていないサヤは海魔相手に名乗りを上げる)

私は剣士サヤ!、温泉街を護る為、私の生活の為、温泉タダ券の為、貴方達を倒します、お覚悟!。

(海魔はモンスターとしてはクラゲモンスターよりも知能は高い方だが、それでも動物並の知性しか持っていない)
(いきなり現れて、堂々と名乗りを上げたサヤに「何言ってんだコイツ?」という様子を見せ、警戒を強くする)
(腰に差した刀を抜いたサヤが構える頃には、海魔達もまた、この雌の人間が自分達の敵である事をはっきりと認識した)

てりゃぁぁっ!、とうっ!!、……きゃぁっ!?、粘液って傷口から出て来るの!?。

(サヤは剣士としてはへっぽこだが、海魔もまたモンスターとしては左程強い存在ではない)
(地元住民でもそれなりには対応が出来る程度の戦闘力しか持ち合わせておらず、毒や幻覚を使ってくる事も無い)
(気合いの声と共にサヤが刀を振り回せば、海魔の触手が斬れたり斬れなかったりの泥仕合がしばらく続いた後……)
(何本か触手を斬り飛ばし、その切り口から噴き出る白い体液を浴びたサヤが肩で息をしながら、顔をしかめる)

うぅぅ……着物がベトベトに……服の中にまで入って来てる……。
でもでも、何とか3匹やっつけたし、あとは、えーと……2匹……?。

(倒した数と、目の前で蠢く2匹の海魔を数えながら……もう一息、とばかりにサヤは刀を構え直す)
(しかし、サヤは勘違いしていた……海魔は6匹居たのだ、3匹倒したのならば、残りは……そう、3匹の筈だ)

ひゃああぁぁぁぁっ!?。

(何かが後ろから脚に絡みついたと思った次の瞬間、視界が上下逆さまになったサヤは悲鳴を上げる)
(背後から近づいていた一際大きな海魔がサヤの脚を掴んで、その身体を吊るし上げたのだ)
(しかも悪い事に、驚いた拍子に持っていた刀をサヤは落としてしまっている……吊るしあげられた姿勢のまま、サヤは呟く)

……あれ、私……もしかして、ピンチ……?。