これで荷物は良いかな
(家族には『旅に出かけます』と書置きを残し、勤めていた病院には辞表を提出した)
(しばらくは衣食には困らない程度の貯蓄があり、旅を続けても問題はない程度のものがある)
ふふっ……ちょっと前だったらこんなことは絶対しないと思ってたんだけどね
(黒かった髪を栗色に染め、肩より上で切っていた髪を背中まで伸ばした。コンタクトはやめて久しぶりに眼鏡をかけ始め、キッチリとした暗色系のコーディネイトをしていたのを柔らかい素材のものを着て白や淡い色の服に変える)
(姿見に移った自身の格好を見てこれは別人なのではないかと最初見たときは違和感を覚えた)
(2,3度鏡の前で回ってみたり動いたりしてこれが自身の姿なのだと確認すると身支度を整え始める)

(必要最低限の着替えと身分証や財布をボストンバッグとバイクに積みこむとライダージャケットや皮手袋などを着始める)
今からこういうものを新しく買いそろえるっていうのは面倒だしね、サイズは合ってるといいんだけど……
(青春時代に趣味でそろえたバイク用の装備、全体的に黒を基調としたものが多いのは昔の私の趣味だから仕方がない)
(無事に着用することができたと確認すると、何か不具合がないか簡単な確認を装備とバイク両方確認をしていく)

家に引きこもっててもコレが回復するとは思えないし外に出かけた方がいいよね
(医者として働いていた際に受けた事故、その影響により人と深い関わりを持つことを避け熱意や気力をもって激しく努力することを体が受け入れられなくなってしまった)
(それは日常生活や仕事にも支障をきたすため、とても悩ましい症状だったが精神科に相談してもよい答えは返ってこなかった)

皆はもっと別の解決法があるっていうだろうな……
(辞表を提出する際には周囲の人から何度も引き留められたが、それを煩わしいと思ってしまうのはこの病気のせいなのだろう)
…………ま、いいか
(悩んでいても仕方がない、今は目先のことについて考えようと思いバイクのエンジンを掛け、跨る)
いってきます!
(行先などに見当もつけずに今はここから離れた場所を目指そうと考えて実家を後にする)

一先ずは高速に乗って遠くに向かおうかな
(こういったことを考慮したわけではないが高速に乗れる大型バイクを所有していたことは幸運に思った)
(適度に実家から離れた距離まで到着すると適当なSAに入り、感触を取りながら地図を購入して目的地を探す)

【一先ず導入を書かせていただきました】