>>72
(道の駅でこれから向かうとある街についての話があった)
(なんでもその市では全体で『フリーハグ』を奨励しているようだ)
海外とかならそういう風習もあるし珍しくもないけど日本でもやるようなところがあったんだねー。
(アメリカでの滞在中に仲が良くなった同性はともかく異性が相手でも何度かそういった行動はすることがあったが、日本ではあまりそういうことをする人を見かけたりはしなかったし自分からも進んでするわけでもなかった)
ふーん、愛をこめて……ね。
まぁそれがどんな理由であれど、する側もされる側もそういうのはやっぱり『愛をこめて』やるっていうのが情熱的だよね。
(後半の抱き着いた相手の表現に関しては過大表現だろうと思って聞いていた)
あはは……、さすがに何十人っていう人に囲まれてやられちゃうのは少し困り者だね
エッチなことは別に私も嫌じゃあないから構わないし、たまにはそういうのも面白そうだよね〜。
それじゃ、行ってくるね!
(そう告げると私は早速その件の〇〇市に向かってバイクを走らせて行った)

(個人的な興味や、日本でそう言ったことを奨励して実際に行うとどうなるのかといった好奇心もあって私はその市で行われる『フリーハグ』の体験に向かっていた)
(バイクを駐輪場に止めて軽く身支度を整えてから私は表通りの散策をする)
さすがってところかな……?
(表通りでも抱き合っている異性同士や同性などが所々にいるが、それらを好奇の目で見る人などもおらずそれがこの市では当たり前のことだというのをその環境が伝えてくれる)
(中にはかなりの愛情がこもっているのか抱き合いながらキスをしている人たちもいた)
(そんな街中を観光し、適当に買い物を済ませている最中だった)
!?
(通りを歩いていると不意に後ろから誰かに抱き着かれたようだ)
(少し驚いたが、私もこの市では奨励している『フリーハグ』の文化に馴染まなくてはならないし、嫌というわけでもないのでそのまま抱き着いてきた人物を振り返り黙って抱き返す)
……これで満足?
(数分の後、耳元で静かに私は囁き、抱き着いてきた男性は頷くと満足そうに去っていった)

(次に抱き着かれたのは午後の昼下がり、少し公園でゆっくりと休憩でもしようかと思っていた時だった)
(ここでも抱き合っている人たちは多かったが、自分もこの雰囲気に慣れていったため、さほど気にすることもなくゆっくりとした時間を過ごしながら空を眺めて呆けていた)
んーっ、こうしたいい天気だとこういう風に何もしなくてもいいものなのかなぁ。
(軽く伸びをして目をつぶっていると前から脇に手を回されて、そのまま抱き着かれ唇にキスをされるような感触がした)
ふっ……あ……。
(自分からも相手の体に手を回して抱き着きながらキスをする)
ん…………。
(相手はキスの経験もまだない人間だったのか、少し驚いているようだったが私はそのまま深くキスをする)
これがしたかったんでしょ、ほら……もっとやりなよ?
(男性に呟くと男性はもう一度私とキスをする。最初と比べて少し攻めの体制で互いが互いを求めるようなキスを)
……ふぅ、これから先はもっと大事な人にやらないと。
(あっという間の出来事だったのかもしれないが私と名前も知らない彼との間に流れた時間はとてもゆったりとしたものだった)
(名残惜しそうに彼は去り、私のほうを一度見るとそのまま振り返ることはなかった)

【長くなってしまったので続きます】