「はい、桜です……って、えっ、何!?」
(突然、耳の穴に軽く入れられた指
そこに小さな違和感を覚え、首を振って抵抗するがすぐにリリアーナは指を抜く)

「ふぅ、ですよね……お願い、早くこのベルトを外してください。
こんな状態になってるのを男の人に見られでもしたら……って香澄に?」

(そう疑問を返すとともに、開かれたカーテンの向こうから現れたのは
黒いロングヘアの似合う少女、自分の無二の親友の……)

「かす、み……?え、どうして、裸なの?それに……何か変だよ……」
(一瞬、嫌な想像が頭をよぎる。香澄は、そして自分もこれから
何か恐ろしい麻薬を注射され、何も分からない状態になるのではないかと。
そのまま海外にでも売られてしまうのではないかと。
分娩室を中心に広がる、薄暗い廃病院特有の雰囲気もその想像を後押しするが。)

『ん……では助ける為にこれを桜に入れないと……』
「入れる……入れるってなん、ですか……?そもそも、これは何なんですか……」
(親友の尻から抜き取られた異形の蟲、その全貌を見て絶句する桜。
さきほど脳裏をよぎった最悪のシナリオ、それすらも一瞬で吹き飛んでしまう。
それほどにぞくりと全身を包んだ生理的な嫌悪感は強いものだった。)

「リリアーナ……さん。貴方が、貴方が私をここに連れてきたんですか……
いったい私、これからどうなるんですか……?助けてくれるって本当ですか?」