(妹の香奈と仲良く会話をしながら、作りたてのお夕飯を食べる)
(外では恥ずかしがり屋であまり喋らない香奈だけど、家の中ではよく話してくれる)
(視線を横にずらすと見慣れない……ううん、長く見ていなかったから新しく感じる顔がある)
(両親が海外に行ってしまって、香奈と二人きりで生活しないといけない)
(そんな少し心細い時にタイミング良く帰ってきてくれた兄だった)
(旅行に出ていて、顔を合わせていない期間が長かったせいか、帰って来た時は驚いてしまった)
(こんな顔だったっけ……? なんて風に思ってしまったほど)
(それでも一週間も一緒に暮らしていれば、当たり前のように馴染んできた)
ありがとう、兄さん。いっぱい食べてね?
(兄に料理を褒められると嬉しくて、微笑みながらもっと食べて欲しくなる)
「お姉ちゃん、予定より一人増えちゃったんだからペースは考えてよー?
お兄ちゃんも、お母さんとお父さんが帰ってくるまでにとんでもない出費にならないよう気をつけてね。
お姉ちゃんの料理が美味しくって食べ過ぎちゃうのもわかるけどっ」
(すかさず香奈が口を挟んで来て、兄と私に注意をする)
(香奈の方が早く帰ることが多くて買い物を頼むことも多いから、家計が気になるんだと思う)
(あまり真剣に注意している感じではなくて、笑いながらだけど)
(…そう、香奈は兄にも笑顔を見せるし仲良くできている様子だった)
(帰って来てすぐは私と同じように戸惑っていたのに一週間ですっかり打ち解けている)
(兄妹なんだから当たり前…なんだけど、少し新鮮な光景を見ているような気分になった)
え? うん…うちの学校、宿題出す先生多くて…
……そうだね、兄さんに勉強見てもらうのは当然…だもんね
部屋で、待ってるね?
(何気なく切り出された兄からの言葉に、少し間を置きながら返事をする)
(自分の宿題だから自分でやらないと…という考えがあったんだと思う)
(だから手伝ってもらっていいのか逡巡してしまったけど、兄の提案はありがたく受け取るべきだと考え直した)
(兄が勉強を見てくれるのは当然のこと、だから)
(部屋に来ると兄が言うのなら、それを拒む理由なんてないし頷くだけだった)
香奈、片づけはよろしくね
「はーい。今日も美味しかったよ、ごちそうさま!」
兄さん、すぐ準備するから少ししてから来てね
(食事が終わると香奈と兄に声をかけてから席を立って二階にある自分の部屋に向かう)
(私の部屋は白系統のシンプルな印象でまとめてある)
(と言っても飾り付けが無いとかじゃなくて、片づけを定期的にやってるだけ)
(香奈はたまに部屋に遊びに来ると、綺麗すぎて落ち着かない! なんて冗談で言ってくる)
(対照的に香奈の部屋はピンク色のクッションとかぬいぐるみとか小物が多くて、女の子らしい可愛い印象)
(だから余計に私の部屋が整いすぎてるように見えるんだと思う)
(それでも、特にお付き合いしている相手もいないし、私が使うだけならこれで良いと思っていた)
(男性の目は父親くらいだし、それも娘の部屋を覗くような人ではない…)
……あれ?
兄さんって今まで私の部屋を見たことあったかな
(ふと疑問に思う)
(長く離れていたから見たことは多分ない、と思うけど)
(考えているうちに、兄が今から部屋に来るということを少し意識し始めた)
(部屋に置いてあるスタンドミラーの前で身だしなみを確かめる)
(服装は学校から帰って来てすぐお夕飯の準備に入ったから、制服のままだった)
(淡いブルーの半袖のブラウス、襟に付けたリボン、青系統のチェック柄スカート)
(服の乱れがないことを確かめてから、髪型も確かめる)
(確認が終わったら机の方に移動してカバンから今日出された宿題のプリントを取り出した)
(科目は数学で、まだ1年生だから基礎的な内容だけど、量が多かった)
(授業中に少し進められたから、まずそこを見てもらってから…とか考えながら、兄を待つ)