>>31
うん、よく覚えておくね
(大事なことと強調されたけど、例え強調されなくても忘れられるわけがないと思う)
(こんなに嬉しいことを今まで知らなかったのがビックリするくらい)
(でも兄以外の人に抱きしめられたことなんて無かったし、兄以外だったら…ここまで嬉しくなかったかも)
(見つめあってるだけで心が満たされてくる気がする)
(きっと、恋人である兄が相手だから、こんなに嬉しいんだ……)

そ……うだね、最初はこんな感じで…
……っ!
(嬉しかっただけに、終わりが近づいてきたことを残念に思う)
(もっと抱きしめて欲しい、なんて流石に言えなくて、受け入れるしかなかった)
(でも、思い出したように兄に他の「恋人がすること」を指摘されて、記憶が蘇ってくる)
(他でもなく私自身が答えたことなんだから忘れるはずがなくて)
(それから、今からソレをすると考えて、胸の鼓動が一段と速まった気がする)
(顔は近くて、吐息が触れ合いそうなほどで、兄がやると言えばすぐできる距離……それなのに)
えっと、それは……その……
(兄は私にどうするかを尋ねてくる)
(今までは兄に尋ねられたり教えられたりで、自分から頼んだりしたのは、勉強をお願いした時だけ)
(いくら兄が恋人だとしても私の方から積極的に言い出すなんて、できなかった)
(でもこのまま終わるのもイヤで……)
(私は少し口を閉じて、頭を目一杯働かせて考えてみる)
(兄とこれからソレを……キスをするということを)
(私と兄がキスをする光景をまず想像してみて、全力で頭を振りたくなるほど恥ずかしくなる)
(一度膨らみ始めた想像は、恥ずかしくなっても簡単には止まらない)
(キスをする光景の次はキスの感触がどんなか考えてしまう)
(兄の唇にちらりと目を向けて、それが触れると考えて…)
……お、お願い、兄さん
私に……キスを教えて、ください…
(脳裏に兄の唇が私の唇に重なる瞬間を思い描きながら、私はお願いをしていた)
(したい……と一瞬思った次の瞬間には口が動いていて少しビックリする)
(軽く触れ合うキスでいい……のかな? 心のどこかで囁く自分の声が聞こえた気がした)
恋人同士がするキスを、ね……?
(自分でも本当にビックリするお願いが口をついて出てきた)
(でも紛れもない本心ではあって、言い出せたのが不思議なだけ)
(震えるような掠れるような声できちんと伝わったか不安にもなるけど)
(兄と目を合わせながら交わす視線の中に期待を込める)