>>42
(夕食が終わった後、洗い物を手伝ってくれたお兄ちゃんが二階に上がるのを見送って残りを片づける)
(終わった後はリビングに残ってソファに腰かけた)
(お姉ちゃんは夕飯の準備があるからしばらく制服のままだけど、私はすぐに着替えてた)
(お母さんに買ってもらった部屋着で、パーカーとショートパンツのセット)
(シェルピンクのボーダーがかわいくて、しっとりとした肌触りもお気に入りだった)
(ソファに身を埋めてリラックスしながらテレビの番組を変えていく)
(ニュースは興味なくて、結局バラエティを見ることにした)

おかえりー、お兄ちゃん
(テレビから視線を外して、二階から降りてきたお兄ちゃんを見る)
(私は正直、男の人が苦手……というか家族以外の人が基本的に苦手だった)
(すぐに緊張しちゃうと言うか恥ずかしくなって視線を逸らしちゃう)
(それで相手の印象悪くしちゃったんじゃないかと思って、そのまま喋れなくなる)
(頑張って話しかけてくれる積極的な子なら安心して話せるようになるし、それで今の友だちはできた)
(でもそれも女の子限定で、男の人だとどうしても怖いって感覚が優先しちゃう)
(だから、お兄ちゃんが久しぶりに帰ってきた時も、最初は恐る恐る話すのが精一杯だった)
そうだね、先にお風呂は済ませちゃおっか
いいよ、隣に座って座って
(だけど今はこうやって普通に話せてる)
(笑顔で隣の空いてる場所を叩きながら誘うなんて、お父さんにだってできない)
(家族を含めてもここまで仲良くできる男の人はお兄ちゃんだけだった)
(もちろん、兄妹なんだから親しいのは当たり前だし、怯えてた頃がおかしいんだけど)
学校のことかー
うーん、ちょっと、ね…
(お風呂の準備が終わったお兄ちゃんが戻ってきて隣に座る)
(バラエティとか家事のことなら話は弾むけど、学校のことに関してはちょっと暗くなった)
(友だちはいるし、成績が特別悪いわけじゃない)
(ただ気になっていたのは男子の視線だった)
(遠巻きに見て来るのを感じるし、それが一人じゃなくて何人もだから正直不気味)
(文句があるのかも知れないけど話しかけてくる人もいなくて、どういう意味かわからない)
(友だちに相談してみても、「香奈はニブいから」とか言われるだけ)
(バカにしてるわけじゃないんだろうけど、優しく微笑まれたら詳しくと突っ込む気になれない)
(そのことを少しお兄ちゃんには話してみた……けど、あまり長くしたい話じゃなくて)
(すぐバラエティの話に戻して、楽しく話す時間にした)

(少しして、タイマーが鳴ってお風呂が沸いた)
いつもお兄ちゃんが最後だもんね
ん……一緒に?
(突然の誘いに目を丸くしてしまう)
(驚きながら、昔一緒に入っていたと言われて記憶を探ってみる)
(……うまく思い出せなかった)
(でも、お兄ちゃんが嘘をつくとは思えなかったし、多分私が忘れてるだけだと思った)
(忘れてたって思うと、段々と本当に入ってたんだという気がしてくる)
そう、だったね……うん、昔は一緒に入ってた
成長……成長かぁー
お姉ちゃんほどじゃないし、面白くないと思うよ?
(成長を見てくれるって言葉に嬉しくなる)
(一緒に入ってたお兄ちゃんなら実感してくれると思うし、お風呂に入るのが楽しみになってきた)
(でも成長と呼べるほど体つきが変化してるわけじゃないって自覚もあって、少し冗談も言ってみる)
(お兄ちゃんがお姉ちゃんをどんな目で見てるかはわからないけど、あの胸は大きいと思う)
(きっと少しは意識してるだろうなって考えてのからかいだった)

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