「いえ、別に…それは構わないのですが。毎回言ってますよね。
会議テーブルの上に腰かけるなんて非常識ですよと……。」
(半ば呆れた様子ながら、しかし諦めにも似た口調で呟いて)
(この人は他の人物が居る中だと常に凛としてそれこそお手本の様な存在なのだが)
(どういう訳か、私と二人きりだとこの様な姿勢で語り掛けてくる。恐らくは此方が本来の会長なのだろう)
(気を詰めているのだと思い、程度に注意するだけで最近は済ませてきた)
「二人で合宿…ですか?」
(いきなりの提案で驚いた。確かに合宿をするというのは大賛成だ。己の鍛錬にもなるし、加えて周囲とのコミュニケーションも図れる)
(しかし二人でとなると、いよいよ国体に向けての準備だろうか?等と考えてしまうが)
(手渡されたプリントには確かに学校からの印鑑も押されており、それも長期の合宿となる旨も書かれていて)
(まずは両親にも話をしないと、と思った矢先だ。)
「……既にお父様とお母さまにも…本当に手回しをしておいでとは…流石早いですね会長…。
解りました。私としても正直会長以外に相応の相手が居らず退屈していた所。この御厚意は有難く頂戴します…
ですが………。」
(自分の髪を撫でる手を軽く払いのける。)
「毎度言ってますが簡単に触らないでください。如何に会長と言えど、あまり許される物ではありませんよ?」
(どうにも自分に相当の好意を抱いてくれている様子。かく言う自分もまた、唯我には一定以上の尊敬という点では行為を寄せてはいる)
(他の人物なら問答無用で睨み付けている所だ)
ご用件は以上でしょうか?それでは今日の所はこれにて失礼しますね。
(そそくさと唯我の元から離れ、一礼してから会議室を後にする菫。その菫を笑顔で見送る唯我の表情に、少し不安を覚えたが)
(この日はそれ以上追及する事はなかった。)
〜数日後〜
(今日より夏期休暇に入る。そして菫もまた、今日より唯我との強化合宿にいく事になっていて)
(待ち合わせ場所は唯我の家。そこに行けば、唯我が待ち、合宿地までの専用ヘリが用意されていて。)
(菫は特に驚く事はなく、簡素な挨拶をすませる。実は菫もまた、良家のお嬢様なのだ。)
「……この井出だちだと強化合宿というより小旅行ではないでしょうか。ともあれ本日より宜しくお願いします。」
(場所が場所という事もあり、麦わら帽子に白のワンピースと言った一見するだけで良家のお嬢様と言った井出達の菫はそう呟く。)
(辛うじて剣道着と私服が入ったトランクと竹刀を持っている事で一応の体裁を繕って入るが…。何はともあれ学生服ではなく、私服でよいとの事もあり)
(比較的軽装で来た菫であった。)
【了解しました。来られる際はまた、待ち合わせ場所で落ち合いましょう。】
【一旦失礼いたしますね】