「ふざけるな……ですか、こちらは本気のビジネスなんですけど……」
きょとんとした表情で返すクレア
その表情はまさにカタギのビジネスレディのものだ、少なくとも裏社会の人間のものとは思えない
「ちょっといきが悪くなりますしできれば使いたくなかったのですけど
仕方がありませんね、やっぱりあれをお願いします」
隣の男たちに指示を出すクレア
ひとりの男がヴィーナを押さえつけ、左袖をめくりアルコールのついた綿を押し付け消毒をはじめる
そして、その位置にもうひとりの男がどこからともなく取り出した注射器をそっと突き立て、ゆっくり何かを注射してゆく
「大丈夫、すぐに死ぬ薬は入れてませんから
基本的にヴィーナさんの精神を落ち着けたり、力をちょっと弱くする薬……
ああ、もっともここを抜け出せば半日ぐらいで……悶え死ぬことになるやつは入ってますけど、ね」
本当はそんなものなど入っていないのだが逃げられてはいろいろ面倒だ
彼女にはおとなしく死の座に就いてもらわなくてはならない
「でもヴィーナさんがおとなしくしていればそんな死に方はさせないって約束します
誓ってもいいです」
そう言いながらじっとヴィーナを見つめるクレア
「そちらの組織にすぐにどうこうするつもりはありません
今の状態で正面戦争なんかになったら絶対こっちが負けますもん」
注射した鎮静剤
これからの暴行によるショック死を避けるための鎮痛剤
"視聴者サービス"を円滑に進めるための媚薬
それに彼女の筋肉を程々に奪う量のわずかな筋弛緩剤を混ぜて作ったカクテルはいい加減回っている頃だろうか
……そろそろ彼女をスタジオにつれていきたい時間なのだが
言葉を紡ぎながらクレアはそんなことを考えていた
「ただ、ヴィーナさんには、今回のお詫びとしてちょっと過激なビデオに出てもらおうと思ってるんです
ええ、今までにも何人か支払いが滞った娘に出てもらったんですけど……
私達のお客さんにはいろいろそのテのことに興味がある男の子も多いですから……こういうの、売れると思うんです
だから改めてお願いしますね。私達のビデオに出てくれませんか?」