「…………気色の悪い女だ……」
自分と同じ服装で入ってきた女。しかしながら声色や纏う雰囲気が先ほどまでとはまったく違う。
ヴィーナは彼女の変貌ぶりに憎悪とは別の嫌悪感のようなものを覚えた。
「………………」
ヴィーナにも聞き覚えのある名前を言い、薄気味悪いタイトルコールをする女。
微笑む女のその側でヴィーナは少し項垂れている。
どうしてこうなってしまったのか。と考えていた。
任務を遂行してきてボスからの信頼を感じ、自信を持ってしまい気が緩んでいた。ボスからの信頼はこの上ない幸せだが、自惚れていた。
もう少し注意深く行動していたら、警戒していたら、こんな無様な格好をさせられていなかったのかもしれない。
だが、今更そんなことを考えたところでカメラが止まることも目の前の女が消えることもない。
今はただ従って、ボス達に危害が及ぶことのないよう行動するだけ。
「…………ヴィーナだ……」
挨拶を促され、一瞬カメラの方へ視線を向けるがすぐに逸らし小さな声でそう呟いた。