「終わりましたね……」
分娩台に腰を下ろしたまま息絶えた女を見下ろす
ひとことつぶやいたその口調は先ほどまでのエンターテイナーとしてのそれではない
淫具を軽く引っ張ってみたが動かない、やむなく無理やり強く引っ張る
きゅぷん、と音を立てて女性の命を奪ったバイブが抜けるが同時にドス黒い血が
どぼどぼと彼女の性器からたっぷりこぼれ落ち、分娩台の汚物受けを満たす
おそらく子宮頸管を通る動脈を傷つけたのだろう
「あらあら、皆さん、ヴィーナお姉ちゃん死んじゃいましたね
ふふ、どうでした?楽しかったですか?またスクゥームを飲みながら是非わたしたちの動画を見てくださいね?
それではまた」
カメラに向けて手を振るが先ほどまでの軽薄な口調はどうにも出せない
無理に演じてみたがどうにもぎこちない
今も震えが止まらない
原因は……やはりヴィーナのボスへの一途なまでの愛情だ
そのためならこんな道具で処女を捨て、そしてそのまま命を散らすこともいとわないのだ
なぜこんなことまで?そんなことしても何の得にも、ビジネスにもならないというのに
背筋が寒くなった、きっと今、自分の顔色もすごく悪いのだろう
ヴィーナがボスの名前を叫んだ部分は音声を加工して彼氏の名前にでもして誤魔化せばいいが
自分がこんな表情を見せてしまったのは厳しい、こんな映像を流してしまえば同業者になめられ
この街でこれ以上仕事ができなくなってしまう
ヴィーナという女はムダ死になるがいっそお蔵入りにでもすべきだろうか?
クレアがそう考えた瞬間……
上階から聞こえてくる狂騒、悲鳴そして銃声
「な、何ごとですか!?」
「お嬢様!」
血の匂いに地下室に駆け込んできたのはさきほど自分とヴィーナに化粧を施したメイド達
「先ほどの女の組織の刺客が乗り込んできました!」
……うかつだった、彼女の組織はこちらよりずっと大きく危険な組織だ
それにヴィーナという女は所詮使い捨ての駒だと思っていたのだ
それだけにまさか正面から乗り込んでくるなんてないだろうと思っていたのだ
きっと彼らは仲間の女を助けに来たのだろう
恐らくもうすぐこの地下室にまで乗り込んでくるに違いない
そして、仲間の死体を見つけるのだ
「早まりました……っ!」
どうしよう、泣いて謝って死体を返しても許してはくれないだろう
彼らは私にどんな報復をするのだろうか?
今、手に落ちる前に自害する?致死量の薬物ならたしかにこの地下室に運び込んではあるが……
いやだ、そんなことできるわけがない!