>>532
「何を……!」
(何を言っているのかさっぱり理解が出来ない。)
(目の前にいるのは妖異。ただの妖異。これまで葬ってきたモノ。)
(人語を理解する物なんていくらでもいる。自らの領域を持つものも。)
(この身を狙ってきたものも。淫魔も。)
(全てこの手で斬り、消飛ばして来たじゃないか。)
(何一つ目新しい物などない。……なのに得体のしれない怖気が身体を走る。)

「……。」
(黙ってやられるわけにはいかない。)
(だが体を護る服はなく、剣はへし折られてしまった。)
(風の力は抑え込まれている。)
(だがまだ尽きてはいない。)
(どういうトリックか知らないが災害規模の風に触手や壁は無事だった。)
(――となれば目の前の個体を狙い撃つのみだろう。)

「お断りよ。―――とった!」
(短く殺意を告げ、戦闘を開始する。)
(残量から使えるのは全開で数秒。)
(この短い戦闘が終わったらエネルギー切れで倒れても構わない。)
(風の力を使った高速移動で一瞬で後ろに回り込み、頚椎に風の鎌を叩き付ける。)
(目で追える敵なぞ存在しない、絶対の一撃。)
(放った瞬間勝利を確信するほどの手応え。)