刀を拾おうとしたその瞬間が完全に隙であった。
「もらいましたよ!」
その全身へと菌糸が降りかかった。
彼女がしまったと思った時にはもう遅く、全身が菌糸というトリモチにまみれてしまった。

白く臭い液体が彼女の黒スーツや髪を白く染め上げていた。
それは、粘つき彼女の手を剣まで届かせることすら許さない。
「どうですか、気分は」
先ほどまで圧倒していた魔物が地下へと降りて、彼女の前に降り立った
「『こんなもので私を捕えようと?』でしたっけ? いい気分だ」

そうして、魔物は彼女に向かってその腕の菌糸を鞭のように振るった。
普段なら避けられたり受けられるものだが、それは確実に動けない彼女を捕えて、スーツを切り裂こうとしてくる
「ほら、ほら! どうですか? 気分は!」
そして、刀に手が届きそうな時にトドメとばかりに魔物は彼女をつかむと、
そのまま壁へと叩きつけた。
べちょりと壁にくっつく嫌な粘着をんと共に
「そこでおのれの無力さを嘆くといいです」