>>352
(来栖雅と名乗った少女はベンチに座り、人形を眺めている)
(まるで人形が人形を眺めているような奇妙な錯覚を藍は感じたが、頭を振ってその思考を消す)

「私は人形のことはあんまり分からないけど、雅ちゃんは詳しいみたいだね。
 すすめられたからつい買っちゃったんだ、この人形」

(黄昏市場を散策しているときに、懇意にしている依頼主兼古道具屋の店主から勧められたのだ)
(懐が温かったのもあり、助手代わりにでもなるかと買ってみたが)
(よくよく考えてみれば一般社会に溶け込んで暮らす藍と共にいれば、とても目立ってしまうだろう)

「……名前はないんだって。この人形、名付けた人にずっとついていくって言われたから。
 だからまだ私も名付けてない。それで、もしよければなんだけど――」

(そこで藍は一瞬言葉を区切り、息を吸ってそのまま続きを話す)

「雅ちゃん、名付けてみる?素人の私より人形に詳しいあなたの下にいた方が幸せだろうし、
 何かトラブルが起きれば私が解決するから」

(一般人を異形絡みに巻き込むことになりかねない発言ではあるが)
(不思議と藍は、来栖がその筋に関しては藍より、いや黄昏市場にいる者たちよりも)
(よほど深い場所に辿り着いているのではないかという直感を感じていた)

【それでは本日もよろしくお願いします】
【時間帯は休日の夕暮れって感じで】