>>361
(一旦人形を木箱に戻し、藍が囁く言葉に耳を傾ける)

「……うん、その名前でいいんですね」

(マリア……聖母の印象のある名前を藍は伝えた。本人は特に理由などは考えていないというが、雅は人形への保護の祈りを込めたものだと考えた)
(名は心を表すともいう、込めたものが前向きで明るいモノであれば呪いも祝福へと変わるだろう)
(雅は深く深呼吸をすると木箱から人形を取り出し、赤子を持つようにやさしく抱き上げる)

「これが本当に正しいかはわからないけど、私たちが大切な子たちに名前を付ける時と同じ方法でやってみます。
 人の意志が強く籠った子へのものは滅多にないけどきっとできると思いますから。
 用心棒の経験があるなら何かあっても頼りがいもありますしね!」

(胸を張る藍に雅は信頼の眼差しを一度向けると人形の方へ目を移す)

「……あなたの名前はマリア、これからよろしくね?」

(人形の眼を見つめゆっくりと話す)
(若干の呪力を込めているため身体を動かすために必要な分が移り、手先などに人形特有の関節が見えるようになる)
(夏場の空気には似合わない冷たい風が周囲に少し吹き、人形の腕が少し動く)

「ふぅ……これでとりあえずは終わりですかね」

(息をつき、膝の上に人形……マリアを乗せて力が抜けたようにベンチの背もたれに寄り掛かる)
(糸が切れたように宙を見上げ、ぼんやりと眺める)
(なるべく他の人に見せないように気を付けてはいたが、つい気が抜けて首に巻いていた包帯を見せないようにすることも忘れていた)