(じっとりとした熱気が肌に纏わりつく夏の夜。)
(静まり返った雑木林の中、ゆったりとしたノースリーブのワンピース姿で緋彩は異形の気配を察知した。)
(市街地の喧騒から遠ざかり、静かなその場に現代日本にいる野生動物にしては大柄な獣が行く。)
(全長3mはゆうに越えている体躯、犬に似た頭部、その口の端にくわえているのは――)

…………人?
(ぐったりとしたそれは、ピクリとも動かず息があるのかわからない。)
(とはいえ、あれが犠牲者であることは確かで息があるのならば助けなければならないし)
(あの獣をほおっておけば似たような被害にあう人が増えるであろうことを考え付いた緋彩。)
(それはその獣の前に飛び出すには十分な理由だった)

まち……なさい!
(左腕に文様が浮かんだかと思えば右腕に長さ1mほどの幅広い刀身の西洋剣が握られる)
(それを目の前にいる獣に向け声をかければ、獣は動きをこわばらせ緋彩に向き直った)

【それではよろしくお願いします。】