(数回銃声が上がる。)
(それとほぼ同時に長身のシルエットが視界に飛び込んできて、そちらに気をやっていると)
(獣が得物を離すまいと牙をかみ合わせる。)
(するとくわえられた人がピクリと動き、口からか細い声が漏れた。)
………まだ息がある
(それを確認するとサンダルに包まれた足が土に沈み、緋彩の体が矢のように弾かれる)

……大丈夫、ですっ……すぅ――餌になった人が生きてるみたいです!

(他人に指示をするという行為に躊躇が発生して一呼吸)
(少しだけ声を大きくすることを意識して助けに入ってくれた人に声をかけた。)
(ほぼ同じくして火薬の匂いと鉄の匂いを察知した獣が身を跳ねさせる)
(あちらも生きることに必死なのだろう、くわえられた得物を離す気はないらしい)

…………ッッ!
(何度も鳴り響く銃声にいくらから肩を竦ませながら地面や木に銃弾が穿たれる様を見る)
(流れ弾や跳弾が自分やくわえられた人に当たるかもしれないと考えた緋彩が踏み込み進路をふさぐように剣を振るう)
(そうするとそれを飛び越えるように獣が体を跳ねさせ、空中に飛ぶ)

――今!
(跳んで空中にいる時間はそこまで長くはない、が体を撃つ時間くらいはたぶんあると考え)
(不可能ならばと弓を引くように切っ先を相手に向けて剣を引く緋彩)