(何かの千切れる音が聞こえた。同時に何かの折れる音も聞こえた)
(ちぎれる音は藍が抵抗し、何かをちぎった音だろうと予測できる。なぜならそれが自身から聞こえなかった音だからだ)
(もう一方、何かの折れる音には非常に聞き覚えがあった。子供が玩具を壊してしまったように、樹の太い枝が折れるように腕が限界点を超えて折れてしまったようだ)
藍さんは無事……みたい、その子もまだ人形としての命は終わってないみたいだね
ならよかった、ミヤビにはかなり無理させちゃったみたいだけど
(『私であって私のものではない身体』自身をも人形とし武器として扱う秘術によって雅の身体は完全な人形になっている)
(痛覚や人の本来持つべき感覚は視覚や聴覚、嗅覚を除いてほとんどが失われており、雅は自身の身体も最愛の人形の一つであると数えていた)
(動かなくなったマネキンの頭を少し撫でると、ふらふらとしながら立ち上がる)
(腕にはあまり力が入らず、足腰もマネキンに対し全力を使ったため軋んでいた)
そう……ですね。
あははっ、ミヤビも結構完成度の高い子だと思いますから……ね
(戦闘の疲弊からか自身と身体が分離されたような、自身も人形の一つとして数えているような言葉で話す)
藍さん、ちょっと驚かないでくださいね?
(糸が切れたように雅の身体は倒れると動かなくなる)
(即座に西洋人形のうちの一体、大きいカバンを背負ったものが雅の身体に駆け寄り服の上から腕や足に触れていく)
やっぱり無茶させすぎちゃったかな
(声は雅のもので人形から発せられているように聞こえる、動きは先ほど戦闘で見せたものよりも人に近く、人形の特徴さえなければ生きた人間のように感じられるだろう)
(カバンを下ろすと中から包帯と治療用のテープを取り出し、藍の方へ向き直る)
藍さん……驚きました?
これは私の秘密です。さすがにこういった場になってはもう私の秘密も隠しきれないと思ったので……
ちょっと協力してもらってもいいですか?
男性の方はあちらで3人が対処してくれてるので
(照れくさそうに頭を掻きながら指をさすと、他の三体の人形が男性の介抱をしているようだった)
【もう一回起き上がると今度こそマネキンも原形をとどめられそうになかったのでこうしてみました、簡単な私側の能力について触れてみようかと】