>>82
枯れ木に〜、花を〜、咲かせましょう〜♪

(このお花見も10歳の頃から始めて今回で4回目、動物園で飼われている蛇を連れ出すのも慣れたし、だんだん盛大になってきている)
(一夜のことだけとはいえ、そろそろ誰かに見つかってしまうかもしれない)
(ま、その時はその時、『龍宮講』に握りつぶさせればいいし、いっそのこと乙姫ちゃんの動画配信ネタにしてしまってもいいし)
(何かしらのトラブルは想像しているものの、いつもどおりゆるく、本人的には真面目に、恒例の行事を楽しんでいた)
(が――)

枯れ木に〜、花を〜、咲かせ……ん?
(ミズチの腕に巻き付いていたシマヘビが頭を耳に近づけて誰かが来たことを知らせる)
(物理的な声を出しているのではないので、近寄らなくてもいいのだが、雰囲気作り、気分的に耳を澄ませているようなものだ)
(言われてそちらを見ようとすれば、その誰かから先に話しかけられてしまった)
(見張り役の蛇もいることにはいるが、みんな宴に酔っているのだ)
(それについては、彼らのための宴だから問題にはしない)

あら、あらあらあら……
(ミズチは大盃で鼻から下を隠して、わざとらしく驚いた振りをする)
(驚いてはいるが、普通に声をかけられただけ、いきなり銃撃されたのでもないから戯けるくらいはできる)
初めてのお客様、かしら?
(疑問系で首をかしげる。ミズチからは影になってはっきりと姿が見えない)
(逆にミズチは月明かりで照らされて、鳶色の瞳やきらきらと輝く白みがかった金髪が輝くのが相手には見えるだろう)
それとも迷子の子猫ちゃん、かも?
私に何かご用でも?
取材だったら事務所を通してほしいのだけど。
(そして『乙姫ちゃん』を知っているかどうかの確認)
(アイドルとしての乙姫ちゃんの認知度や人気のリサーチは必須なのだ)

【どんな格好かわからないから影で見えなかったことに】
【ローカルアイドルの乙姫ちゃんを知ってるかどうかはお任せ。知られていなくても、くじけないもん】