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堪えきれない恐怖感が、「ひっ」という小さな悲鳴の形をとって唇から漏れた。
太腿を抱え上げられ、右足一本だけでの片足立ちを強制された不自然な体勢は、
顔を上げて確認するまでもなく卑猥で煽情的な姿となって、窓ガラスに映り込んでいることだろう。
手すりに縋りつき、残った右足に力を籠めて、どうにか転ばないようにと耐える里桜の身体を、痴漢たちは嘲笑うように嬲り続ける。
背後に感じる男――松川の体に身を預けることを良しとせず、自力で姿勢を保とうとしても、不安定極まりないこの状況ではそれも叶わない。

「ひ、きょうもの、ひきょうッものォ……!」

山口の指先が自分の秘唇で飲み込まれていく様を目の当たりにし、絶望感に打ちひしがれながら、それでも抗いの声を止めない里桜。
男を受け入れるには圧倒的に湿り気の足りないソコではあっても、指2本程度であれば多少の引っかかりこそあれ、挿入されることを阻めない。
女の身体を扱うことに慣れた動きで、膣の内側を責め立てられる感覚は、里桜の身体に否応なしにセックスの気配を感じさせて。
粘膜を傷つけられまいとする防衛機構によるものか、山口の指に応えるように粘液が滲みだしてくる。
それは、やがて里桜自身の耳に届くくらいの、粘り気のある水音を立て始めた。

感じてない。気持ち良くなんかなっていない。

脚を抱え上げられた片足立ちの姿で、ブラウスに透けた巨乳を揉まれ、ショーツをずらした股間に突き入れられた指先で肉壁を撹拌される己の姿。
ストッキングを破られ、ブラウスの胸元をはだけさせられ、羞恥に身悶えながらも逃げ出すことのできない、惨め過ぎる女の姿。
顔を上げ、分厚いガラスに映るその姿を視界へ捉えてしまえば、自分の心を自分で支えられなくなってしまうかもしれない。
だから、里桜にできるのは否定の言葉を紡ぎ、念じ、繰り返すことだけ。
呼吸が荒くなり、次第に言葉を口にするのも辛くなってきても、唇をかみしめ心の中で呪文のように周囲の痴漢たちを罵倒し続ける。

声を出すのが辛いのは、この体勢が息苦しいから。

そう、自分へと言い聞かせ続けなければ、自分の身体すら信じられなくなってしまいそう。
それほどに、乳房を責める手も、淫裂をかき混ぜる指遣いも、執拗でありながら繊細かつ巧みなものだった。

確かに山口の言う通り、こうしたプレイの経験は里桜にだってある。
オプションとしてのパンスト破り、背後から片脚を抱えられての淫部弄り。
鏡の前に立たされて、背後から乳房を揉まれながらの素股で、客を射精に導いたことだってある。
痴漢プレイの一環として、今と似たような服装で「痴漢に責められて目覚めちゃう痴女OL」になり切ったことだってあった。
彼女にとっては忘れ去りたい遠い過去の出来事ではあったが……。

それらは全て、安全な店の個室の中での出来事で。
ルールを守って大人のファンタジーを楽しもうという、良心的な客との合意の上の行為で。
料金分の時間が過ぎれば覚める、うたかたの夢のようなもので。

決してこんな風に、彼女の意思を無視して、集団で、公共の場で。
あられもない姿をさらけ出させながら、欲望の赴くままに辱めてやろうという行為ではなかった。

右足の力が抜けそうになる。片脚では踏ん張りが利かない中で、懸命に姿勢を正そうとした瞬間。
不自然に力が加わったためか、ブラウス越しの巨乳を堪能していた男の手に引っ張られる形で、幾つかのボタンがプツンと弾け飛んでしまった。
何が起こったのか、里桜はすぐには理解できない。
ただ、さっきまでよりも広げられた胸元から、ずり上げられたブラで飾られた重たげな実りが、今にも零れ落ちそうになっている様子だけは、視界の中ではっきりと捉えてしまっていた。

【非処女ではありますが、お店じゃ本番NGだったので、余計にびびっている感じですね】