>>40
ふぅーっ。
(ホームに入ってきた電車が停車して、僅かな人たちがこの駅で降り、自分たちを含めた新たな乗客を車両へと飲み込んでいく)
(女性専用車両までは到達することが出来なかったけれど、優花里ちゃんの後ろをブロックしているから大丈夫)
(緊張が僅かに解れて安堵の吐息を漏らした刹那)
あっ、待って。その子、友達なんです。
(周りの男性乗客が思い思いの場所に移動を始めれば、頑張って踏ん張ろうと試みたところで出来ることはなく)
(自分の身体は左へと押し流され、優花里ちゃんは右へと押し流されるのを)
(片手をスクールバッグから外し目一杯伸ばし訴えるが、押し流す動きは止まらず)
(僅かに優花里ちゃんの肩に指先が触れ、振り返った優花里ちゃんの不安そうな表情が見えただけで離されてしまって)
(優花里ちゃんと自分の間に更に他の乗客が壁のように入り込み、完全に優花里ちゃんの姿を見失ってしまう)
(自分も押し流される間に、スクールバッグが引っ張られて危うく手から離れそうになるが)
(乗客の動きが止まると、慌ててお尻の後ろにバッグの位置を両手で戻して痴漢へと備える)

[どういうこと? 専用じゃない車両っていつもこんな感じなの?
 それとも……]
(若干、無理矢理にも思えなくもない不自然な乗客の動きで、自分たちが引き離されたことを訝しみながらも)
(それが単なる偶然なのか、誰かが意図してそういう行動をとっているのか、女性専用車両でしか通学経験がないので判断のしようもなく)
(困惑ともやもやした割り切れない気分を抱えたまま、痴漢される可能性を考えると警戒に身体が自然と緊張する)
[なにしているんだろう、私。今日も優花里ちゃんと離れて守ることも出来ないなんて……。
 わざわざこの時間の電車に乗る意味もないじゃない。
 ううん、違う。優花里ちゃんに悪戯している痴漢を捕まえられなくても、私を痴漢している相手を捕まえれば……
 きっと優花里ちゃんを狙っている痴漢もいなくなるはず]
(電車が動き出し、出鼻を挫かれ折れそうになる気持ちを、ポジティブに考えて何とか奮い立たせていると)
[来た!! 嘘でしょ]
(もしかしたらまた痴漢が来るかもしれないという予測と、来てほしくない夢なら覚めて欲しいという相反する感情が交錯する)
(混乱する気持ちなどお構いなしに、痴漢の手が自分の手をなぞるように蠢けば激しい嫌悪感が沸き上がる)
(それに被せる様に加わるゾクッとするようなむず痒さと擽ったさ)
(手を引けばその感覚から解放されるのは分かっている)
(でも、それをしたら今度はまたお尻を触られてしまう。きっと昨日以上に……)
(どうしたら良いか分からず感情は混乱して、考えを纏めるのもままならない状況で重ねられるむず痒さ)
[嫌っ、こんなの駄目]
(お尻を触られた時と違って声が出るほどではないけれど、何とか堪えようとしてもむず痒い擽ったさに)
(バッグを握る手からは力が抜けかけて手が開き、慌てて握り返す動きを何度も繰り返す)
[もう無理!]
(頑張ろうとしても感じやすい身体の限界は、気持ちでどうにか堪えることが出来ないほど低く)
(早くも我慢の限界が来て、触られていない方の手をバッグから離して痴漢の手を捕まえようと指を伸ばすものの)
(昨日手を取られ痴漢の身体のどこかに手を押し付けられたのを思い出し、躊躇して手を戻してしまう)
[どうしたら良いの。私、どうしたら……]
(迷っている内にも痒いような擽ったいような何とも言えない感覚は、声を上げるほどではなくても身体を駆け巡って)
(対策を考えようにも手からの感覚に翻弄されて、考えを纏められないまま)
[もう駄目、これ以上我慢できないの]
(スクールバッグを床に落とすよりは良いと、触られていない左手でバックを引き上げて前に戻してしまう)
(学校指定のダッフルコートを身に纏ってスカートのお尻の部分は隠れていても)
(コートを除けば、スカートは完全に痴漢の手の前に晒された状態になっていた)


「…………ゃっ…………ぃゃっ……」
(理絵が痴漢の手の対策に葛藤しているころ、優花里は痴漢にスカートの中に手を入れられて太腿の内側を撫でられていた)
(襲い来る激しい嫌悪感に目に涙を溜め、自分以外には聞こえない小さな声で拒絶し)
(背筋を強張らせて下を俯いたまま彫像のようにじっと立ち竦んでいた)

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