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……んっ……くっ……はぅ……。
(右手で痴漢の手を払おうとすれば、より強い刺激を与えられてしまうことを何度か繰り返す内に)
(強気の澄ました表情は崩れ、弱々しく眉を八の字に下げ、どうしたら良いのか良い考えも浮かばず切ない表情になって)
(周りの乗客が気づいてくれない事実を変だと思いつつも、深く考える余裕は全くなくなる)
(強い刺激を受けるくらいなら、抵抗をせずにやり過ごす方がいいと危ない思考が頭を占めて実践してしまって)
(声を抑えようとしても、左手で口を塞いでいるにも関わらず甘さを含んだくぐもった小さな声が漏れ続けてしまう)
ほっ……。
(学校の最寄りの駅名を告げる、車掌さん独特の節をつけたアナウンスが流れて)
(痴漢の手が離れていくと、ようやく解放されたのだと早合点して安堵の吐息を漏らし)
(気づいていた筈なのに無視した周りの男性乗客に腹が立ち、きつい表情を浮かべて睨みつける)
えっ!! …………ぅそっ……。
(完全に油断していて対応が後手に回って、スカートを抑えに手を伸ばした時には)
(既に捲られてしまっていただけでなく、手の侵入さえ許してしまっていて)
(慌てて痴漢の手首を捕まえようと右手を伸ばした刹那)
はふぅっ……んぅ……ぃゃっ……。
(コットン生地のショーツ一枚越しに、痴漢のごつごつとした掌をより近く感じただけでなく)
(円を描くように撫でまわされれば、嫌悪感と恐怖にビクッと大きく背筋が震え肩が動く)
(いくら強気ではあっても、まだ無垢な女子高生であれば恐怖心に身が竦んで)
(少し大きな驚きの声が漏れ、続いて嘆願するような拒否の小さな声が上がる)
[嫌! こんなの嫌ぁ。誰でもいい、誰か気づいて助けてお願い]
くぅ……あっ……ん、んぅ……はぅっ……。
(電車が減速するGを感じながらも、中指がお尻の谷間に沿って下へと降りて)
(より強く力を込められて刺激を与えられれば、より強い嫌悪と恐怖、そして何か分からない感覚が背筋を走り)
(先ほどより少し大きく、より甘さを増した声が漏れてしまう)
[嫌なのに、気持ち悪いのになんで……背筋がゾクゾクして擽ったいような、むず痒いような、疼くような感じは何なの?
 私の身体どうなっているの?]
(学校で教わった性教育の知識しか持っていなくて、今の自分の身体が示している反応に惑乱してしまって)
(優花里ちゃんと同じように目に涙が浮かびあがらせて、頬を紅潮させ)
(艶めいた表情をほんの僅か浮かべてしまっていることには、全く気づいていなかった)
…………はっ、はっ。
(電車が止まってドアが開くと痴漢の手はスッと離れて行って、相手を確かめようとするが)
(サポートの撮影担当の痴漢に押し流されてホームへと降り立ってしまって、何も出来ない屈辱感だけを感じてしまう)
(明らかに涙を流し、頬を紅潮させ熱を帯びたような顔の優花里ちゃんと合流すると)
(ばつが悪く何も掛ける言葉もないまま、二人並んで重い足取りで何も話すことなく登校していった)

ひゃっ!! 何するの、びっくりするからそういう悪戯止めてよね。
(体育の授業に備えて着替えていると、優花里ちゃんと同じく幼稚舎から一緒の友達が)
(スッと触れるか触れないか程度の微妙なタッチで背中を擦り上げれば、背筋をビクッとさせると同時に)
(痴漢にお尻を触られたときに似た感覚が背中を駆け抜けて、思わず甘さを帯びた悲鳴を上げて)
(冷静さを失い早口で相手に文句を捲し立てる)
(「昨日今日変だったけどいつもの理絵ちゃんに戻った。何かあったの?」と聞かれるが)
(「ちょっと……ううん、大したことじゃない」とつい強がって友達に相談する機会を逸してしまう)

(翌日、また女性専用車両に近い側の階段のすぐ脇に優花里ちゃんが来るのをスマホを見ながら待っていた)
(しかし一昨日より遅い時間になっても優花里ちゃんは現れず、ぎりぎりになって欠席するとの連絡があり慌てて走り出す)
(しかし、昨日よりは階段に近い側の車両までしか到達できずに、仕方なく不安な表情を浮かべて乗り込んでいく)