>>46
なるべく早く痴漢と決着をつけないといけない。
朝練が始まったら優花里ちゃんと一緒に通学できないし、何かあっても……。
(私学のお嬢様女子高や女子高、共学問わず進学校がいくつか集まり)
(インターハイや国体の高校の部を目指すクラスにないそれらの学校が、競い合うというよりは)
(日ごろの成果を発表し合うという感じに近い、のんびりとした新体操の大会)
(もう四半世紀以上続く大会に自分の学校もエントリーしていて、それに向けた朝練も近く始まるはず)
(それまでに優花里ちゃんが安全に通えるようになんとかしないといけない)
[でも、どうやって? 自分の身さえ守れなかった私が何をすれば良いっていうの?]
(お風呂から上がり長い髪を丁寧にブラッシングして乾かしながら、先ほどから同じ問いで堂々巡りをしてしまっていた)
(簡単に撃退できると思っていた痴漢。今は優花里ちゃんを助けるどころか、自分も標的になってしまっている)
[それにしたって変。周りの乗客はなんで優花里ちゃんも私も助けてくれなかったの?]
[もしかしたら、周りの乗客も痴漢の仲間だったというの?]
(何かでグループを組んで痴漢する人がいると聞いたことがあり、そんなの嘘だとおもっていたけれど)
(今日のことを考えれば、そうかもしれないと納得できる部分もある)
(決定的な対策は専用車両に乗ること以外には思い浮かばず、優花里ちゃんにLINEしてからベッドに入った)

[心配だけど、休むならもう少し早く連絡くれても良いのに]
(熱があって今日は学校を休むと優花里ちゃんから連絡が来たのは、電車がホームに入ってくる直前で)
(さすがに人混みの中を全力で走り抜ける訳にもいかず、出来る限り速足で女性専用車両へ向かうけれど)
(電車がホームに入って来て動き出した人の流れに阻まれて、結局は近くのドアから一般車両に乗り込むことになってしまう)
(優花里ちゃんのことは心配ではあったが、今の自分の状況を考えれば思わず愚痴りたくなるのは仕方ないと思っていた)

[もしかして、この人たち……]
(ドアが閉まり電車がゆっくり始めて、周りを見回せば自分も女性としては背が高い方だが)
(それ以上に背の高い男性に取り囲まれてしまっていて、言い知れぬ不安と恐れを抱き始めていた)
[やっぱり来た。同じ痴漢に間違いない!]
(掌がスカートにぶつかり、軽く擦られただけなのに分かってしまうのは全然嬉しくなくて苦悶の表情になってしまう)
(強めに痴漢の中指がお尻の谷間を這い、強めに上下になぞられると強い嫌悪と怒りと共に)
(ゾクッとする不思議な感覚がまた背筋を駆け上がるけれど、予想は出来ていたので声が漏れそうになるのをグッと我慢する)
[これは囮。お尻の真中に注意を引き付けておいて、昨日みたいにスカートを捲って中に手を入れるつもりなんでしょ?
 その手には乗らないんだから]
(ギュッと力いっぱい内腿に力を入れて痴漢の手が前へ侵入するのを阻み)
(スカートの持ち上がる瞬間を待ち一瞬のただ一度のチャンスにすべてを掛ける)
[もう絶対に許さないんだから!!]
(スカート裾を掴み捲り始めていた左手の手首に狙いをつけ、横目で見ながら素早い動きで手首を掴む)
[これで痴漢であることを告げる声を上がれば私の勝ち、痴漢は破滅するしかないんだから]
この人、ちヵ……はぅっ、んぅ……んんっ……。
(勝利を確信した瞬間、囮と思って抑えなかった、抑えられなかった右手が今までにないくらい強く指が動いて)
(股下を吐くように擦り始められると、初めて感じる強い痺れるような感覚が背筋を駆け上り)
(それが一回だけでなく何度も続いて駆け上って痴漢を指摘する声は途中で消え去り)
(強気の表情は完全に消え去り、眉も切なそうに下がり驚きの中に確実に艶めいた表情を浮かべ)
(抑えようとしても抑えきれなかったくぐもったはっきりと甘い声が漏れ、掴んでいた左手から力が抜けて)
(ほぼ手首を放した状態に近くなるけれど、なんとか太腿に入れた力だけは持ちこたえる)