…手紙だと、ここのはずだけど…
(人通りの少ない路地裏の宿屋の前でサラは困ったように佇んでいる)
(あっちこっち迷いながらやっとここまで来た)
(滅多に来ないこの町までサラが来たのは、突然届いた手紙がきっかけだった)
(差出人はマクズという人で、内容はサラの仕事の手伝いをしてくれるとの事だった)
(普通なら怪しすぎて破ってしまいそうなものだが、サラにはそれを捨てれない理由があった)
(まずサラは、冒険者になりたてでロクな仕事がなかった)
(その為その暮らしが精一杯の日々で、何か仕事になる伝手を求めていた事)
(そして差出人の名前に、微かな聞き覚えがあった事)
(幼心に、昔父親と仕事をしていた冒険者の名前を記憶していたから)
(そっと扉を開けて宿屋に入ったサラを、マクズが目ざとく見つけて声をかけてきた)
(冒険者だったとは思えない外見だが、引退後なのだからそんなものだろうと自分で納得する)
(椅子に座ったサラに、マクズが話し始める)
あっ、は、はいっ!
(母親に似てると言われ、緊張気味に返事をするサラ)
(実際にサラは母親似で、艶やかな黒髪は密かな自慢であった)
(続くマクズの話を、一言も聞き漏らすまいと真剣に聞くサラ)
(それによると、この宿屋の主人ならサラのような駆け出しにも仕事を斡旋してくれるらしい)
は、はいっ!お願いします!
(勇気づけるようなマクズの言葉に、サラは勢い込んで返事をした)
(そこで見計らったように、宿屋の主人がパンケーキとホットミルクを持ってきた)
はいっ、じゃあいただきます!
(行儀よく両手を合わせてそれを頬張りはじめる)
(緊張で朝から何も食べていなかったからか、サラはどんどん食べ、飲んでいく)
(そして少しした頃、サラの様子が変化し始めた)
あ…あれ…
(顔が熱されたように熱くなり、頭がくらくらする)
あ…マクズ、さん…なんか、ごめ…気分、悪く…ふあ…
(それが薬の効果とは露ほども思わないサラは、体調が悪くなったのだと思ったようだ)
【はい、こんな導入で大丈夫です】
【それでは宜しくお願いしますね】