しばしの沈黙。
それは知るか知らないかではなく、知らせるか知らせないか。
「……分かった。これについては誰にも言わないし、どこにも書かない」
当たり、だった。それも大当たり。
二十歳前の柔肌に傷をつけ消えない跡を残す、それも実の親が。
しかもそれはそれだけにとどまらない、心身を損なうような……
これを糾弾するのは学級の徒の仕事ではない。
何よりも、自分が得られるものよりも彼女が失うものが大きすぎる。
黙って目を閉じ、ついでに後ろを向く。
微かに聞こえた衣擦れの音が、何が起きているのかを想像させる。
ややあって彼女の承諾の声が聞こえた。
振り返るとそこに見えたのは、想像以上のものだった。
「あ、ああ……すまない。
まさか、本当に……それに、それだけでない……
君は、辛い目にあってきたんだね……きっと、身体だけでなく心にも傷が」
これ以上は、言葉にできなかった。
刺青だけならまだアートと言えたろうに、それ以上に傷付けられて……
【このままだと、村に来たことを後悔しそうなレベルで感情にダメージ受けてます】
【紋様よりも火傷や痣が痛いですね】