>>617
ちょっと……梨奈ちゃん、キツイよ……お願いだから離れて……。
(喜びが爆発して歯止めが利かず、力いっぱい彩文を抱きしめていた梨奈の腕を軽くポンポンと叩いて離れるようにお願いするが)
(梨奈の頭の中ではサリヴァーンの声が響いて、顔をぴったりと寄せ合っているせいで梨奈の瞳が操り人形のように虚ろになったのに気づかず)
(頭の中で梨奈が「はい」とサリヴァーンに答えて、梨奈の頭の中に)
(「彩くんは女の子の服が似合う男の子、絶対に女の子の服を着せるんだから」と決意が頭を支配していく)
「ねぇ、彩くん。女の子の格好して写真に取られるってどんな気持ち?
 前々から気になってたんだけど教えて」
(彩文から離れた梨奈は帰宅する用意を既に整えていて、スクールバッグの中からこの前コンビニに有った新刊の「男の娘」が載った雑誌を取り出して見せて)
それは……別に叔父さんから頼まれて人が足りない時に手伝っているだけだから。
お小遣いもらえる嬉しさはあるけど……、他に特別な気持ちはないよ。
(抱き着かれて一瞬思いだした快感に浸っていて、梨奈の鎖骨付近の淫紋が光り微かな魔力が放出されたのに気づけず)
(少し言い淀みながら特に女装を気にしていないことを強調するものの、一年数か月振りにお願いされて女装の自分の表紙を見て)
(小学生の頃、男の娘モデルをしている時より少女っぽさが増している気がして目を離せなくなっていて)
「嘘。彩くん、本当は女の子の恰好するの好きなんじゃない?
 家では女の子の格好して過ごしてたりしない?
 じゃ〜ん! ここに私の制服もう一セット持って来たんだ、ねぇ、ここで着て見せてお願い。
 ほら、そこに倉庫もあるし、この時間なら誰も来ないしお願い」
(ストレートに女装が好きと言われれば、確かに一回だけ、一回だけと言いつつ断らず男の娘モデルを続けてきてしまっていて)
(否定することも、何か理由を付けることも出来ずにいれば、梨奈がいつもより大きなスポーツバッグを今日は持って来て)
(その中から自分の制服を取り出して、彩文の前に見せる)
そ、それはちょっと……。ン、ンンゥ……。
(流石に学校で女装は躊躇われてどう断ろうと思って躊躇していると)
(敵ではない以上サファイアのような警戒心は薄く、制服を持ったまま迫って来た梨奈に唇を奪われてしまう)
(また、二人の淫紋が惹き合うように淡く紫の光を放って浮かび上がれば、彩文の思考が何故かぼんやりとする)
「……ねぇ、駄目?」
(長いが拙いファーストキスが終わって、梨奈が微かに淫らな女の顔で甘えるように言えば)
……誰にも内緒にしてくれるなら。
(キスの酸欠と淫紋の影響で思考が鈍った彩文は、なぜが混乱したまま小さく頷いてサリヴァーンの罠の中へ一歩また自ら進んでしまっていた)
(そして二人は手を繋ぎ、講堂の薄暗い倉庫の中へと姿を消した)