「考え過ぎるのも良くない……ということですわ」

結局のところ、先日の『たまたま噂の痴女と同じ格好で同じ電車に乗っちゃった』プレイは空振りに終わった。
上手く行けば痴女扱いされて公衆の面前で強制露出プレイ、そうでなければ仕事帰りのオジサマたちにささやかな幸運をお届けしよう。
などという目論見は、物の見事に打ち砕かれたのだった。
日本で数年暮らすうちに忘れかけていたが、派手な装いは却って敬遠されがちなのがこの国。
最近は多少変わってきたとはいえ、奥ゆかしさを美徳とする風土であんな装いをして、うまく獲物を釣り上げようだなんて余程の幸運が必要なのだろう。
エリカは反省の意味も込めて、今一度基本に立ち返ることとした。
即ち――

先日と同じ駅のホーム、同じ時間。
事前にネットの掲示板に撒いておいた画像も、前回と同じ『赤いコートの爆乳マゾ痴女』シチュエーション。
違う点は二つ。
一つ目は、しとしとと降り続ける雨模様の天気。夜の空気はじっとりと重く、半袖では多少の肌寒さを覚える程に冷え込んでいた。
二つ目は、エリカの身を包むのが『季節外れの赤いコート』ではなく、『膝丈まである白いビニールのレインコート』だということ。
如何にもコンビニで買ってきましたというような、半透明でフード付きの安っぽいソレを身にまとい。
学校では後輩の女子たちが羨望の眼差しで見る美しい金髪は、アップにまとめてハットの中へ。
フードは被っていない為、見る角度によってはうなじの白さが眩しいだろう。
前回身に着けていたサングラスの代わりに、これもコンビニで買ってきたマスクを着けて口元を隠している。
総じて、派手さとは無縁の地味でありがちな梅雨の装いでありつつ、それでも周囲の目を引く要素があるとすれば。
その、窮屈そうな――あまりにも窮屈そうな、ビニール生地の張り詰めた胸元のボリュームぐらいだろうか。

やがて、電車の到着を告げるアナウンスが流れ。
日本の交通機関らしい正確さで停止した車両の、自動ドアが静かに開くと。
白いレインコートの女は、レインブーツを履いた足でその中へと乗り込んだのだった。

【こんな感じで如何かしら?】
【これからの時期は気候の面では露出しやすいですけれど、服装については少し悩みますわね♪】