そこだけ一足先に太陽が沈んでしまったかのような、薄暗い木陰。
『チカンに注意!!』と書かれた立て札の前で少しの間足を止め、エリカはきょろきょろと辺りを見回した。
そして、青い瞳がもう一度、その注意書きへと向けられ――何を思ったのか、少女は忍び笑いを漏らしていた。
遠くに聞こえる、子供たちの声。
『いーち、にーい、さーん』
かくれんぼでもしているのだろうか。
木立と繁みとに視界を遮られ、向こう側の様子までは見えないけれど、元気の良い声が辺りに響いている。
「?」
ふと、少女の視線が男の方へと向けられた。
片や薄暗い公園の片隅で段ボールの上に腰を下ろす、薄汚れた身なりの冴えない男。
片や白いパーカーに包まれた見事なスタイルと、楚々とした雰囲気の柔和な笑みを浮かべる、金髪白皙な美少女。
二人の視線が束の間、交錯した。
「♪」
遠目から見ても分かるだろう不潔な装いの男に対し、嫌悪感を覗かせること無く微笑んで、彼女は小さく会釈する。
だが、或いは当然ながら。彼女はそれ以上近づこうとすることはなく、男に対して背を向けて歩き出し――ふと、足元の何かを拾おうとするかのように、前屈姿勢を取った。
タダでさえギリギリの丈だったパーカーの裾が捲れ上がり、黒いタイツに包まれた美脚とヒップラインとが、余すところなく男の目に飛び込んでくる。
スカートごとずり上がってしまったのだろうか?
彼女はすぐに自分の姿に気付いたのか、慌てて体を起こすと裾を整え、咎めるような顔で男の方へと振り返った。
仄かに赤らんだ頬と、羞恥に潤んだ瞳が見えたのもほんの少しの間だけ。
彼女はそのまま、茂みの途切れた先にある公衆トイレへと入っていった。
※ ※ ※
「こんにちわ……いえ、もうそろそろこんばんわ、ですわね♪」
先ほどの少女がいつの間にか、男の傍に立っていた。
金色のポニーテール、白いパーカーを押し上げる豊かなバスト、パーカーよりももっと白い雪のような肌。
10分ほど前に見た彼女の印象と何一つ変わらないその姿――否。
自分を見下ろす彼女の姿を、上から順繰りに見ていけば、ある一点で目線が止まってしまうことだろう。
即ちそれは。
パーカーの裾から伸びる、むっちりとした白い太もも。
あの、丸みを帯びたヒップまで包み込んでいたはずの黒いタイツを、今の彼女は履いていない。
咲き綻び始めた桜よりも尚、淡い薄紅色を帯びた肌が、夕暮れの日差しに眩しく照らされていた。
【よろしくお願い致しますわ♪】
【人数については展開次第、流れに任せていきたいところですわね】