「まあ、怖い♪
あの立て札にあったチカンって、オジサマのことだったんですのね」
襲われちまうぞ、という男の警告を冗談だとでも思ったのか、少女は微笑みを浮かべたままだ。
膨らんだ股間を気にする様子もなく、「お隣、失礼致しますわね」と男の横に体育座りで腰を下ろした。
ふわり、と男の鼻腔を石鹸の香りが混じった少女の匂いがくすぐった。
「でも、本当に襲うつもりなら、前もってそんな風に仰っては下さらないでしょう?
それに、オジサマはとても優しそうな眼をされていますもの……きっと、本当はとても素敵な方ですわ♪」
そんな風に、男の目を見つめて言う彼女の様子は、正しく清楚で清廉。
白皙の美貌とアイスブルーの眼差しは、妖精のソレのようだ。
もしかすると、男が見せつける勃起に気付いていないのではなく、その意味すら理解していないのでは、と思わせる浮世離れした雰囲気があった。
『もういーかい?』『まーだだよ!』
茂みの向こうから、子供たちの声が聞こえてくる。
買い物帰りの主婦たちが世間話に興じながら、遊歩道を通り過ぎていく。
近くの道路を行き交う車の音も、夕暮れ時の空気を伝って、二人の耳に朧気に届く。
この場は確かに二人っきり。
けれど、周囲には確かに人々の気配があった。
「オジサマの匂いと笑い方、ちょっとだけエリカのお父様を思い出します……お父様も働き者で、笑うのが下手で、とっても汗っかきでしたの」
嘘か本当か、少女はポツリとそんなことを呟く。
流石に生足では寒いのか、それとも今は遥かに遠い誰かを思う寂しさ故か、ギュッと膝を抱える腕に力を籠めた。
量感のある胸がムチムチの太ももに押し潰される様を、男はすぐ隣で目の当たりにすることになった。
「だから、ちょっとだけ、お話ししたいなって……ご迷惑で無ければ、宜しいんですけど……」
恐る恐るの上目遣い。
そのまま、相手が清潔さとは無縁の浮浪者であるにも関わらず、温もりを求めるように身を寄せ、男の肩へと遠慮がちに頭を乗せた。
あまりに無防備。
ここが、周囲に人の気配のない屋内だったら、そのまま押し倒されても文句は言えない程の、不用心な行為だ。
この世は綺麗なものだけで満たされていると、妖精めいたこの少女は信じているのだろうか。
これだけの蠱惑的なカラダを前にしても、男はきっと狼になることなんてないと、そう信じているのだろうか。
「暖かい……きっと、オジサマの心の優しさが、伝わってくるんですのね」
少なくとも。
今、この瞬間に性欲のままに行動することを躊躇わせる程度には。
少女――金髪爆乳の清楚系痴女、エリカ・ヒースローの演技は、堂に入ったものだった。
【こんな感じで少し焦らしタイムです。このターン、我慢してくださったらエリカからご褒美がありますわ♪】