(ゆっくり兵士たちに引かれてレティシアは処刑場への道を歩いてゆく)
(一見気丈な表情に見えていたが細かく震える足が彼女の隠しきれない恐怖を表していた)
「言い残しておきたいこと、ですか……」
最後に何か言い残すことは?という敵王の言葉に少し悩んでこう応える
「あなた方に遺す言葉はありません。
皆さまのご武運をお祈りしております、どうか必ず勝利を
わたしは天の上から神々と共に見守っています……
そう我が国の兵士に伝えるようお願いしても叶わないのですよね?」
そう、この処刑が見せしめの、心理戦目的で行われるものだということは分かっている
だからこそ若い女性の処刑に串刺しなどという手を使うのだ
『それにしても色気のない下着だ』
「戦陣で色気のある下着を履いてくる女性はいませんから。
それとも貴方の国では女性の騎士や魔術師は戦場にそういった服装で参じるのですか?」
きっ、とした強い目線で敵王を睨み返す
いつもは絶対にできない目。
たぶんそこに込められているのは尻を撫でられる不快な感覚に対する怒りだけではない
「それに……どうせすぐに脱がされるのでしょう?
わたしはもう神の身許に逝く覚悟は既にできています。
わたしの最期の姿をたっぷりとその目に焼き付けてくださいな。」
ここでレティシアが見苦しく泣き喚き命乞いをすればこちらの軍の士気は下がり、
相対的に敵兵どもはより士気を高めるのだろう
それは絶対に避けなければならない。
そうなれば今度は……戦いに負ければ今度はきっと姫様が同じような目に遭うのだ。
だから少しでも恐怖心を隠しておきたかった、そのための演技でもある。
「さあ、いつでも始めてください。」
震える唇。
震える足。
そろそろ隠しきれなくなってきた恐怖心をこらえるようにゆっくりと処刑場に足を踏み入れた。
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