「ぁ……ぅ…・・」
(失禁に手を濡らしても男は何も動ずることはなく、ただ笑っていた)
(恥ずかしいというより不思議と悔しい気がした)
(だが、それもすぐにどうでもよくなった)
(喉が痛い、どうせムダなのだからもう息をしたくない……)
(体中の筋肉がもう、言うことを聞いてくれない)
(まるで自分の魂を異物として上に押し出そうとしているようだ)
(それに抗おうとして、ますます全身に激痛が走る)
『余程これが気に入ったようだな、しっかりと咥え込みおって』
「すくな…とも…あなた自身に奪われるより…は・・・よかった・・・」
(それでもどうにか言葉を紡ぐ)
(ひとことごとに激痛が走る)
(でも、痛みを感じる間はまだきっとましなのだ)
(もうすぐ脳の機能も停止し、この痛みすら感じることがなくなるのだろう)
「そう……わたしの・・・あなたが持ってたのです・・・ね」
(だから、せめて最後は、一矢報いながら死んでゆこう)
「残念、その布切れはあなたのもの…なっても・・・わたし…あなたのものにはな・・・ません
そして領民の・・・みなさんの心も…いつか、あなたに…そむくひも・・・神様は、そらのうえからみまもってま…」
(その後、自分の処刑を怯えと怒りを覚えながら見つめていた領民たちに送る言葉は
かすれた声で最後まで言うことができなかったのだろう
それでも、全身の余力を振り絞り、故国のほうに首を向けて)
「ひめ、さま…今までありがとう、ございました…生まれ変わっても…」
(そう言いながらゆっくりと目を閉じようとするが既に体を動かす力はなく)
(両目を見開き、酸素を求めた舌を突き出したまま、木馬に上体をもたれさせて…)
(息絶えた)
(その耳に同時に発せられたであろう男の、醜い絶頂のうめき声はついぞ聞こえなかったようだ)