>>30

「その様子……やっとご自分のされた事を分かっていただけたのですね
ですが少々遅すぎました、措置を続行します」

無機質なスピーカーの声
そしていつからだろう、わずかな甘みを帯びた空気を吸い込んだノドや口内が
歯医者で麻酔を施されたときのように痺れ始め、わずかな痛みさえ感じはじめたのは

「血中濃度、フェイズ2への移行を確認しました
資料による想定症状 全身の筋肉・神経の麻痺、弛緩……」

やがて口内の痺れが少しづつ全身の筋肉に広がりはじめてゆく
無意識の内に抵抗していた手足をぴりぴりとした違和感が
やがてびりびりとした痛みが襲いはじめその制御を奪ってゆく

ノドの痛みもどんどんと増してゆき、やがて呼吸をすることすら躊躇するようになるだろう

臓器への反応はまだない、だがそれは彼女の苦痛の時間がもうしばらく続くことを意味していた