>>163
あっ……!?くぁっ!!
(それはほんの一瞬だった。例え素人であったとしても、飛び出した令嬢のナイフを持った手首をまるであっさりと…拍子抜けするくらいに簡単に長身の軍人によって捕らえられた)
(そして腕が捻られ――しかし、さほどの痛みを感じずに――手から力が抜けてナイフを手から離れてしまい、それを手際よく相手は奪い返した)
(意思に反して身体が動いたようでまるで怪しい術か何かをかけらえたような感覚があり、現実感すら薄かった)
(それまであったナイフの柄の感触が消えたことだけが唯一ナイフを奪われたことが事実だと伝えているようだった)
(一瞬でこちらの抵抗力を奪われたことでようやく軍人との実力差を現実感、そして危機感を持って実感し始めたのだが……)

人に銃や…大砲を向けている貴女が何をふざけているの……んっ!!嫌っ…!!離してっ!!触らないでっ!!
やっ!?ちょっ…ちょっと!!嘘っ…やめっ!!降ろしなさいっ!!降ろして―――――………
(腕を掴まれたまま相手の手を払おうと掴まれている方の腕に力を込めるが、一向に振り払うことが出来ない。そればかりか相手の腕さえ微動させることも出来ず完全に固定されてしまったようだ)
(それだけでも相手が並の男性よりも強い力の持ち主であることが伝わってくる……そして触れられていることに嫌悪感を示すようにしばし喚き散らしたが、一瞬……ほんの一瞬見ていると沈んでしまうような深い深い青い瞳で睨みつけられ)
(そこで相手と自分との力の差を理屈や周囲の状況などといったことではなく、本能として叩き込まれる。あれほど煩く喚き散らした令嬢は軍人の一睨みによって途端に静かになった)
くっ……ぁッ!!降ろしっ……降ろしてっ………ぇ…
(軍人が自分の頭上にまで令嬢の腕を掴んでいる腕を掲げた時、令嬢は宙吊りにはなっていないがつま先が床に付くか、付かないかという絶妙な高さになった)
(例え少女1人の体重とは言え、人間1人を持ち上げるのに相手は何でも内容に平然としている。膂力や身体能力が普通の人間のそれとは一線を画する相手の力にようやく危機感が現実感を持ってきたが)
(この時点である意味ではもう手遅れに近い。重いものを持つ機会がなかった令嬢の腕や肩はこうして持ち上げられ自分の体重を支え続けることに長い間耐えきれない。既にピキピキと音を立てて関節が悲鳴を上げ始めてた)

ひっっ……ッ!!?だ、だって……この領内を治めているのは私達、よ…お父様とお母様が…領内の資源や財産を管理しているから…みんな豊かに暮らせるんじゃない……っ…
それにお母様があの薔薇から作られる薬の原料を作るための工場を広げたのよ……っ。それで皆もっと豊かになったんだから……
うっぐ!!しゅ、淑女は貴女達みたいにむやみに身体を鍛えたりしないの……より美しく、嫋やかであることが求められるのよ……
(伸ばされた腕を撫でられ、詰られているような口調はまるでこの腕を責めているよう……それに対して苦痛とそして少しの怯えから顔を歪めながらも反論していたが……)

ひぎゃっっ!!?ァッッ……ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッッッッッ!!!!!
ヒッ……ぁぐぁっ!!腕っ…腕っ!!私の腕ぇっ……あっひっ!!痛いッ…痛ッッ!!!ア゛ア゛ぁっ!!!
(それはあまりにもあっさりと行われた。伸ばされて力と衝撃の逃しどころがない腕に軍人から力が加えられ………令嬢のか細い腕は本来関節が曲がらない方向へと、曲がらない角度で折れ曲がった)
(そう……文字通り「折れ」曲がっていた。肘から折れた腕は曲がる方向とは逆に折れ曲がり、折れた骨が肉の中から皮膚を持ち上げる)
(今まで味わったことがない激痛に襲われ、令嬢の口から耳を劈かせるような高い悲鳴が発せられた。こんな苦痛を味わったことも、こんな悲鳴を上げたことも令嬢にとっては初めてのこと……ただでさえ痛みに慣れていない令嬢にとっては地獄を味わうようだった)
(痛みに我を忘れ、痛みを和らげようと身体がバタバタと動くために吊られた身体が揺れてしまい、余計に苦痛を味わうこととなる)
(そのせいで余計に痛みを味わり、余計に暴れることとなり、狂乱した踊りを軍人とメイド達の前で披露していく)

【お待たせいたしました】
【もし眠気が来ているようでしたら今夜はここまでとして再び置きレスにしても大丈夫ですよ】