『………っ!?何………今の、寒気……… 』
「あら、風邪ですか……撮影まではこれをかけておいたほうがいいかもですね」

そう言ってどこからともかく取り出したケープを響子の露出した肩にかけるヴィネア。

『あ、あの……本当にこの先で撮影するんでしょうか…?
その、何故かわからないんですが凄く嫌な気配を感じるので……。』
「ええ、撮影所は地下のチャペル風スタジオを使うのですが……
事件のことと関係あるのでしょうか……お祓いでもしたほうがいいのかもしれませんね」

 そう言って笑みを浮かべながら廊下の突き当りまで来たヴィネアは扉を開く。
次の瞬間、響子の目の前に映った光景、それは……。
ヴィネアの言う通りの、荘厳なステンドグラスをふんだんにつかったチャペル。
だがその中央に祭壇は無く、代わりに置かれているのは立派な、しかしまるで
いつか博物館で見た電気椅子のように不吉な雰囲気を漂わせる木製の肘掛け椅子。

 そのまわりに散らされた葬送を意味する……白い百合の花びら。
その薫りですら消しきれないうっすらと漂う愛液の匂い。

 今日は撮影だと言うのに、扉から背を向けて参列者席に腰掛けたまま
全く微動だにしない黒いドレスの……おそらくは女性たちの集団。

 そして部屋に充満した邪悪な気がまるで白いものを染め上げるかのように
一気に響子のまとった天使のドレスに染み込み、その動きを鈍重に封じてゆく。
 変身を試みてもいいがおそらくはそれも失敗に終わるだろう。

「セイクリッドティア……いいえ今はやっぱり鏑木 響子?」

先行するヴィネアが、今までの丁寧な口調ではなく……どこか幼さを含んだ口調で
そう言った瞬間、どん!と響子の背中がなにかの力に押され
部屋の中に足を踏み入れてしまった彼女の背後で……重い音を立てて扉が閉まる。

そして。

「邪魔なものは取ってしまおう?」
ぱちん、と指を鳴らすとまるで糸がほぐれるように先ほど掛けたケープと
ショーツがするすると風に融け……。

「このドレスの本当の銘は……"天使の贈り物"じゃない
"天使たちの昇天" どう?いい名前よね?」

 自動で演奏しはじめるオルガン。だが、その曲目は賛美歌ではなく鎮魂歌。
 そして、その音楽をBGMにして……
中央の椅子から大小十数本の触手が響子の手足胴を拘束せんと迫りくる!

【すみません、よろしければ一度凍結中断したいと思うのですが】
【再開はどのようにしましょうか】
【あと響子さん可愛すぎます】