「えー、あー、うん。そういうことになるかな?」
わざととぼけた素振りを見せながら呟く。
「そういうことだから、さっさと生贄になってくれると嬉しいな」
生贄……!?そんな、まさか…ここに居る全員が……!?
(生気を感じない人形にされた人々を見やる。皆死んでいる様に見える。)
(これだけ騒いでも一切の反応さえ見せないのだから…。)
(そうこうしている内に、どんどん引きずられとうとう椅子の前にまで引き寄せられてしまう。)
うくっ……きゃぁぁぁ!?い、嫌っ……はな、して……!!!
(身体を反転させられ、強制的に椅子に座らされてしまう。すぐさま立ち上がろうとするが)
(それを阻止するようにまずは胸元を上下に、触手が絡みつき、続いてグローブに包まれた両手が、ニーソックスでつつまれた足が椅子へと固定されてしまう。)
(どれだけ暴れてもビクともしない。下半身に生暖かい感触が伝わってくる。そしてここで気づく。ドクン、ドクン…という鼓動に。)
(すぐ近く、どうやら椅子から聞こえてくる。この椅子は「生きて」いる。否…)
まさか………この、椅子が妖魔の本体……!?あ、あううぅ………!!!
(椅子に擬態している等気づくはずもない。すぐ間近から溢れる妖気を前にしてようやく気付いた。)
(それ程にこの妖魔の擬態が見事なのだ…衣装にも気づけず、後手に後手にと追いやられそして詰められてしまった。)
(女性を睨みつける様に、睨むも最早どうする事も出来ない。万事休すといった所だが響子は諦めるはずもなく)
(そこに、無慈悲ともいえる事が告げられる)
「せっかくだから、志穂ちゃんで楽しませてあげるね」
(どういう事だろうか?そう思慮する間もなく、女性は参列席の空いている席に座り込んでしまう。)
(それと同時に、少し離れた場所でゆっくりと起き上がる人影が一つ。それをみた響子は目を見開き驚愕してしまう)
「わたしが相手したほうが、響子も喜んで……気持ちよくなってくれるよね?」
志………穂………あ、あぁ…………!!
(ゴスロリ衣装をまとった志穂が、ゆっくりと近づいてくる。邪な意思を瞳に宿らせた友人が。)
(そう、志穂もまた妖魔の生贄にされてしまったのだ。生気を宿さない表情でしかし志穂の声で語り掛けてくるソレを前に)
う、うぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!
(響子は涙を抑える事が出来なかった。助けれなかった後悔。そして同時に志穂をこんな姿に変えた妖魔を許す事が出来ないという激情がこみ上げてくる)
許さない……絶対に、…う、ううううううぅ………!!!
(必死で拘束を打ち破ろうと、力を込める。それこそ腕が、足が折れるのではないかという程に。それでも拘束を抜け出る事が出来ない)
どうして………!!!お願い…!私に、力を貸してぇぇぇ!!!
(悲痛な声が響く。本来なら変身してすぐにでも戦えるのだろうがそれが出来ないのだから…)
【ええ、大丈夫です。】