>>100
歌を口ずさんでいても静かな通りの中では小走りに迫ってくる人の気配には気付いて
口を閉じてから後ろを振り返るとそこにいたのはジャージ姿の男性の姿
「はい、そうですよ♪」
オフの日でしかも格好だけとは言っても変装はしていたのに、正体がバレても素直に認め
余裕があるというより少し天然そうな様子で、ファンの人に声をかけられた嬉しさで微笑みを見せる
「本当ですか? ふふっ、大ファンの人に見つけてもらえるなんて嬉しいです♪」
柔らかい声音で喜びを伝えながら、話しやすいように男性との距離を少し詰める
男性の容姿をあまり見慣れないものと感じてはいても、特別何かを思うことはなくて
自分のファンと言ってくれた嬉しさが先行して、きっと良い人なんだと勝手に信じ込んでいる

「私も嬉しいです! こうやってオフの日にファンの方とお話しするのは初めてなので」
「握手……では足りないですか?」
ファンとの交流は今まで握手会しかしたことがなくて、それもまだ2回ほど行っただけ
少し緊張する気持ちはあっても、直接会って手を握りながら話すのは楽しくて
近付いたのも握手をする気があったからで不思議そうに首を傾げる
「ハグ、ですか。記念…そうですね、確かにこうしてお会いできた記念なら、握手よりもいいかもしれません」
両手を広げながら近寄ってくる男性を見つめながら、納得した様子で手を叩く
小さい手が合わさってから男性と同じように左右に広げて
「では私の方からしますね? えいっ♪」
オフの日であってもアイドルの自覚はあって
ファンサービスなら自分の方からやるべきというプロ意識で男性に近づく
そして可愛いらしいかけ声と一緒にジャージ姿の中年男性に小柄な身体がぎゅっと抱きつく
身長と体格が全然違うせいでハグといっても子供が甘えるような感じ
男性のだらしないくらいふくよかなお腹周りに両腕を伸ばしてしがみつきながら体を押し付けて
テントのように張っていたジャージの下部分にはニットセーターに包まれたお腹がぶつかるような形
「どうですか? もっとギュとしてもいいですよ♪」
何か疑問を感じている様子もなく男性を見上げながら優しく声をかける
男性の方からハグするのを許すどころか待っている態度で

【いきなり遅くなってしまいました】
【何をされてしまうのか楽しみにしています♪】