>>76
(例えカメラマンが下卑た笑いを浮かべていようと、それが仕事相手であるのなら受け入れてしまう)
(……それは表面的な受け入れであって、本心では警戒心が生まれているのだけれど…)
……っ
(そして、そんな警戒心を裏付けるような出来事が起こる)
(二人きりの撮影現場というだけでも警鐘が頭の中で鳴り響いていたのに、更に着替える場所が更衣室とは言い難い場所)
(思わず言葉に詰まってしまい、何とか打開策を考えようとしても幼い頭では上手く策が思い浮かばない)
(そこが着替える場所だと言われてしまえば、更に他の人もそうしていると言われてしまえば…)
わかり……ました
それでは着替えて参りますので、お待ちください
(露葉は深く頭を下げてその指示に従うしかできなかった)
(覗いたりしないという言葉を今は信じて、近くで見ればやはり頼りないと感じるカーテンを頼るしかない)

……ふぅ
(カーテンをずらして中に入ると部屋の光が遮られて仄かに薄暗い更衣スペースが出来上がる)
(大きな声は当然聞こえてしまうが、小さな溜息くらいは聞こえないだろうと思って、息を吐きだした)
(そうでもしなければ、こんな状況を受け入れて、すぐそばに男の人がいる状況で着替えなんてできそうもなかった)
(溜息は聞こえなくても、もう少しの大きな音は簡単に聞こえてしまいそうな状況)
(白地に花柄の着物、お気に入りの私服を脱ぐために帯を外していく、微かな衣擦れの音すら聞こえそうだった)
(自分のことに精一杯な露葉はカーテンの向こうにいるカメラマンの動向になんて気を配れる状態にない)
(いつの間にか近くに寄っていても、直接覗かれなければ気付かない)
(カーテンは完全に床まで到達していなくて、それどころか床よりは大分上までしか達していない)
(露葉の膝から下は部屋側から丸見えでいることなんて、少しも気付いていなかった)

(帯を外した露葉はそれを置けるような台すら無いことを確かめて、仕方なく床に置くことにした)
(当然脱いだ着物までそうしなければならないことを、心の中で咎める声が聞こえたけれど、今は仕事を優先しないといけない)
(着物をはだけて脱いだ露葉の身体が、更衣室に仕掛けられた小さなカメラによって記録されていることは知らないまま)
(薄暗い空間で、まだ起伏の少ない少女の身体が晒し出され、その慎ましやかな膨らみを覆うスポーツブラのようなジュニアブラ、そしてショーツが録画される)
(下着の色合いは上下お揃いのデザインの淡い桜の色合いで、可愛らしく花柄がプリントされ、リボンがあしらわれていた)
(下着で隠されていないお腹周りや太物はいずれも細く、まだ色香よりも幼さを漂わせている)
(それでも露葉の手がブラジャーを外せば、小さくても女らしく膨らみかけた乳房が露出して先端には蕾のような小さな突起)
(ショーツを下ろせば毛もほとんど生えていないような秘所がカメラに写って、ぴったりと閉じた女の部位まで撮影されてしまった)
(カメラの映像を見るまでカメラマンはそれを確認できないとはいえ、カーテンの下から見える光景を眺めていれば、今露葉が何を脱いだか、そして下着の色まで手に取るようにわかってしまう)

(すぐそばに男の人がいるのに、生まれたままの姿になった露葉が手にしたのは、先ほど渡された水着)
(何かの間違いと思いたくなるほどの小ささでも、そこに描かれた矢絣の模様は和風アイドルである自分向けなのは明らか)
(覚悟を決めて水着に足を通し、胸を包み込んでもらうこと期待して、身に付けていく)
……こんな……
(着用し終えた露葉は改めて、見ていた時以上に頼りない水着の着心地に言葉を失いそうになる)
(精一杯布地を広げてみたのに乳首やその周りを隠すのが精いっぱいで、ボトムの方に至っては動くだけで中心に寄っていく)
(大切な場所を隠すどころかむしろ強調するようなデザインに、自分が途轍もなくはしたない女になったような気がして、顔から火を噴きそうなほど赤面していた)

……あの、お待たせしました…
(本当は出たくなかったけれど仕事相手を待たせられる性分ではなくて)
(しかもどこかを隠して意識していると思われたくなくて、手を後ろに組んだ姿で露葉はカメラマンの前に姿を見せる)
(視線は当然相手の顔を見ていなくて、部屋の片隅を見つめながら、それでも幼い肢体を卑猥な衣装に彩った姿を惜しげ無く見せつける)
(その頬は持ち前の白さが災いしてか、朱色の絵の具を垂らしたように色付いているのがわかりやすく)
(無表情な異色のアイドルとして知られる露葉が見せたことのない様子を見せるだけでなくて、まるで発情しているように思わせる)