>>13

(前日の夜、自分が痴漢たちの集まるSNSで話題に登っていただけではなく)
(かなりの盛り上がりを見せ、生贄として快楽に堕とすための相談をしていたことも)
(そのうちの制服フェチのち缶が〇〇女学院のブレザーじゃなくて、□□女学園のセーラー服だったら良かったのに)
(と勝手な発言をしていたことも夢にも思うはずもなかった)
(彩良が通学に使用する私鉄沿線には私学の女子校がいくつかあったが、その中でも彩良たちの通う大正時代創立の〇〇女学院と)
(明治時代に創立された□□女学園は元々お嬢様学校で、今や人気が嵩じて偏差値もそれなりに高い難関校にもなっていた)
(かつては華族や良家の令嬢が通うための学校ではあったが、□□女学院は良妻賢母を育成するため色合いが濃く保守的で)
(彩良の通う〇〇女学院は女性の自立を早くから謳っており、自由な校風と進取の精神に富む進歩的な学校であった)
(それは令和の時代になっても、学校のカラーに残っていて、どちらかと云うと伝統を重んじ、生徒に大人し目の女子が多い□□女学園と)
(独立独歩で活動的な女子生徒が多い〇〇女学院と色分けされ、中学受験を目指す女子だけでなく、痴漢にも人気の一因になっていた)

(当然、日本人の血が1/4しか入っておらず、見た目が周りとははっきりと異なっていて)
(ともすればイジメの対象になりかねず、親はアメリカンスクールを進めたものの)
(父方の祖母が〇〇女学院で、お婆ちゃん子だった彩良は祖母から女学院時代の生活がいかに楽しかったかを繰り返し聞いていて)
(彩良は夢を懐き、付属小学校からお受験をして〇〇女学院に通う)
(世間的には古い言い方をすればお嬢様、今風に云えばセレブの子と言って違いはなかった)

(それこそ彩良が両親も100%日本人の□女学園へ清楚な少女であれば、痴漢の難から逃れるという選択肢もあったのかもしれない)
(しかし、プライドもそれなり以上に高く、痴漢を捕縛してきた矜持と気の強さを併せ持つ彩良に)
(逃げる選択肢は最初からなく、もし今日同じ痴漢に遭遇したならば何の裏付けもなく絶対に勝利できると信じて疑ってもいなかった)

(「やっぱり痴漢だったのね。今日は大胆じゃない。でも何にも対策をしてこないなんて見くびり過ぎ。
  残念でした、今日が貴方の破滅の日なんだから。選んだ相手が悪かったと思い知れ!!」)
(いきなりスカートの中に手を入れられ、お尻を触ってきたのは想定外で驚き、嫌悪が増す)
(しかし、痴漢行為をしてくることは十分に考えられたので、股の下に指を滑り込まされても気持ち悪いが何とか堪える)
(ただ、割れ目に近い部分に指を這わされ少し強めに押し込まれれば、ゾクッとなにか得体のしれない疼きが湧き上がるが)
(奥歯を噛み締め、眉を顰めながらその刺激を我慢して一気に後ろに左手を伸ばし反撃しようとしたとき)
…………ぇっ!?
(左手首と右手首をほぼ同時に掴まれるが、股の下を愛撫する手の感触は無くならず小さく驚きの声を漏らし)
(信じられないという表情で両側にいる男性を見上げ、力いっぱい腕に力を込めて振り解こうとする)
ぃゃっ…………離して…………離しなさい!! ぇっ!!! ゃっ……止めて。
(大声とまでは行かず、それでも自分の周りの人間には聞こえる程度のボリュームで手首を離すように言って相手を睨む)
(痴漢たちが当然視線と言葉を無視して手首を離すはずもなく、また周り皆が痴漢であることも知らなくて)
(もっと大きな声を上げようとした瞬間、スパッツの両腰の部分に股を弄っていた痴漢の手が掛かり)
(一気に腿をスパッツが膝上くらいまで滑り降りるのを感じて、驚きと拒否の声を上げるがそれも無視されてしまう)
(「痴漢独りじゃないの? 後ろに居るのと両側と……まさか…………」)
(自分を狙っている痴漢が一人ではなく、少なくとも三人、もしかすると声が届く範囲の誰も反応していいないのを見て)
(もしかしたら周りすべてが痴漢の可能性に気づき、戦慄と恐怖を覚えて小さく体を震わす)
(「でも、周りが痴漢ならもっと大きな声を上げて、その周りの人達に気づいて貰えばいい。
  女性も乗り込む時にはいたし、きっと誰かが助けてくれるはず。
  あなた達は終わり。諦めなさい」)