>>107

大丈夫ですから……。

(ソフィアの手に自分の手を重ねてニコリと微笑んだあと、少し辛そうに大きく息を吐く)

『世間知らずなのは、この娘も同じ……。
 くっ、小癪な……ぐぁ、んぐっ……』

(レナの記憶を少しだけ読み取っていて、レナも自分とそう変わらないと言い切るが、その後はあまり余裕が無くなって)
(魔法を使おうとすればするほど、レナが内部で抵抗している力が大きくなるのか)
(苦悶の表情は更に険しさを増し、眉間に皺を寄せ息も乱れて苦悶の表情がより深くなる)

『妾ほど高貴な姫もそうは居まい。
 そして、この身体を得て妾は国を守護する巫女となるのだ。
 この分家の小娘が高貴とな笑止な。そちの様な者に真の高貴さなど分からぬものよ』

(嘲笑に不快との表情を崩さず、それでも虚勢を張り自分が如何に高貴であるかを誇り)
(いずれ強い魔力で魔法王国を我が物にする野望の一端を仄めかして)
(レナの魂が高貴と言うソフィアに、自分とは比べ物にならないと言いたげで小馬鹿にした表情を見せて目を細める)


「そのようだな。ただ聞いていてあまり愉快な物言いではないな。王族とは云え、姫様とは大違いだ。
 それを聞いて安心した」

(物言いの居丈高さに不快感を示しつつ、男性時代にも優しく侍女にも語りかけるレナの姿を見ていて)
(ソフィアが言っていたのと同じく、魂のあり方の違いをはっきりと感じ取っていた)
(もう一人の人格を引き剥がしてからと聞き、真に安堵の表情を浮かべて早く元に戻って欲しいを思っていた)

ええ。すごいの考えておきますね。
良いんです。お陰で今はこうして戻ってこれたのですから。
肉体を奪われたままだったら、わたくし自身の心も奪われていたかもしれませんし。
……はぁぃ……すぅ〜っ。

(ニコリと微笑むものの辛そうなことには変化がなく、言葉を紡ぐ声にもいつもの快活さはなく)
(記憶にはっきり残っていたわけではないが、エレノアに何もかも奪われそうな感覚だけは残っていて言い終わると目を閉じ静かな寝息を立てる)
(レナが寝ている間に枷は色をいくつも変えて、エレノアが打ち破ろうと足掻いているのがより鮮明になるが何も起こせずに居た)

(身を清められている間も疲労でマーサは起きなかったが、腕の傷はそれほど深くはなく)
(傷跡は残るかもしれないが、手が動かなくなるなどはなさそうであり)
(そのまま自分の部屋まで連れて行かれると、マーサは翌朝まで目を醒まさず熟睡したのだった)

「エレナ様、姫様は今はよく寝て居られる」

(エレナが部屋に戻ると、既に部屋に戻りソフィアと共にレナを心配そうに見守っていたクレイトンが)
(エレナの手にした薬に視線を送り、期待に満ちた表情を見せる)
(レナの表情はいつもの寝ているときのレナそのもので、一人太平な睡眠を貪っているようにも見えるが)
(エレナが入ってくると、枷の反応はより激しく内部で魔力が蠢いているのを示していた)