それなら大丈夫ですね。上手く消せるのか分かりませんけど……。
そうすると、やはりエレナさまに魔法のことを言わないといけませんね。
……うぅっ、そこまで言われると聞かないのも気に掛かりますし……、女は度胸です。言ってください。
はい、そうしてください。
(記憶の混乱が再燃しないか多少不安に感じたものの、処置を受けることに前向きになるが)
(それだと、やはりエレナさまに魔法のことも含めて相談しないといけないことに、僅かに表情を曇らせる)
(聞かないのも気になるし、恥ずかし過ぎたらと思うと逡巡してしまうが)
(心の葛藤が落ち着いて小さく頷いて言ってくれるようにソフィアに頼む)
(同意してくれたことに安堵の表情を浮かべて、アンジェリカを知っているであろう人物でも良いが)
(街を知ってもらうためにマーサに行ってもらうのも良いかなと、色々と候補について考えていた)
「豊かなことに越したことはありませんけど、無いもの強請りですからね。
そうすると、いずれ私の国もこの国に飲み込まれてしまうかもしれませんね」
(豊かであれば暮らしやすいと思う反面、周りの国から狙われるリスクも考えてどちらが良いのか分からず、考えるのを止める)
(ソフィアの故国と近く、政治が安定してなく貴族も一枚岩でない以上、いずれこの国の一部になってしまいそうな気もしたが)
(それならそれで仕方がないと割り切って、どちらにせよ自分の考えることではないなと思っていた)
「気が合わない奴もいたが、酒を一緒に酌み交わした奴もいたからな。
それならそれで良かった」
(何となくソフィアの気持ちを察して、酒をいつも一緒に飲みに行った相手とは気が合っていて少し心配もしていて)
(今後会う機会があるかは分からないが、牢獄に入れられていないのなら良いと笑みを見せる)
……はい。
(やはり最後の最後で引き止めたい気が湧き上がるが、必死に抑え込んで目に涙を溜めてソフィアの後ろ姿を見送った)
はい、分かりました。
では、マーサさん掃除が終わってからで良いので、クレイトン卿を探してきてもらって良いですか?
(ソフィアの体調を察して、いつも以上に素直に言葉に従ってソファーに腰掛けて)
(本当は自分で呼びにいっても良いかなと思ったが、何かあっても行けないのでマーサにお願いする)
「はい、レナ様。ならば善は急げです。ただいま探して参ります」
(レナが部屋に残っていると掃除が行い難いので、クレイトンを今探しに行くと言い残し部屋を後にしたが)
(ちょうど建物の周囲の見回りから帰ってきたクレイトンと出くわし、部屋に連れて戻ってくる)
クレイトン卿、少し身体を動かしたいので付き合って戴けますか?
(レナが問いかけると、クレイトンは膝を折り傅き「喜んで」と短く応えると、準備を終えたレナと共に中庭へと向かった)
「ソフィアさん、ありがとうございます。助かりました。
悪気がないだけに、あまり強く怒る訳にも行きませんでしたから。
ただ、本当に何にでも興味をお持ちなのですね、レナ様は。
生まれの高貴さを考えれば、喜んで箒を持ったりと云うか、一生持つ機会もないでしょうから」
(食べ物の好き嫌いは上手くあしらって居たものの、掃除の手伝いは正直悪気がない分断り方に困っていて)
(体調の悪さにも関わらず助けて貰ったことに丁寧に一礼して笑みを見せて)
(本当に驚いた表情を浮かべつつ、話しながらテキパキと掃除をこなしていく)