えっ…………。
[なにこれ? 誰が…………]
(翌朝、紗也華が出社していつもの様に女子更衣室へ向かって、自分のロッカーを開ければ)
(予備の制服とブラウス、昨日着ていた制服、寒かった時に羽織るカーディガンの配置が変わっていたり、畳み方が違ったり、皺が出来たりしていて)
(それだけでなく置いてある傘は良いとしても、周期が崩れ万が一の時の為に置いてある生理用品を入れたポーチも動かされていて)
(あまりにも信じられない光景に大きな二重の目をより大きく見開いて固まっていた)
(しばらく固まっていたが、流石に変に思ったのか一つ飛ばして右隣り事務の先輩が声を掛ければ)
(キョロキョロと疑う訳では無いが、近くの女性社員を見回すが怪しい人は居らずに視線を落として)
あっ、何でもないです。ちょっと忘れ物をしたのを思い出して……。
(とっさの嘘を吐き、生理用のナプキンやサニタリーショーツが入ったポーチの中身を確認し)
(週に1、2回通っているジム用に忘れた時の用心に置いてある可愛いトートバッグの中身のTシャツやレギンスも確認して安堵の息を漏らす)
(盗撮カメラの位置からは紗也華が確認していたポーチとバッグの中身は確認できなかったが、大切なものであり見られたくない物であることを表していた)
(落ち込んだ表情になり小さくため息を何度かしながら、仕事をするのに着替えない訳にもいかず)
(通勤用のスーツを脱ぎ始めて、ブラジャーの上にはインナーを着たままブラウスを着ていくが)
(インナーは比較的薄手の生地で、リボンが飾りに着いたシフォンピンクのブラジャーが薄っすらと透けて見えていて)
(シンプルなスーツのパンツを脱げば、同じ色のショーツとガーターベルト、ベージュのストッキングがカメラに映り)
(気痩せするタイプと見えて、思いのほか肉感のあるヒップが映り、制服のタイトスカートをずり上げる時に)
(まだリボンタイをきちんと結っていないブラウスの隙間から、深い胸の谷間が一瞬映っていた)
「また元気ないじゃん、大丈夫?」
(昼休み、いつもは社員食堂には現れず持参のお弁当を食べている紗也華ではあったが)
(その日は二週に一度メニューにオムライスが出る日で、美味しいと評判で一度食べて虜になった紗也華は)
(この日だけはいつも社員食堂を利用することに決めていた)
あっ、こんにちは。そう見えます? ちょっと嫌なことがあって……。
山本先輩は産休だし、如月さんは外国へ赴任しちゃったから……。
(少し暗い表情で石川と同じ研究室の同期に応えて、唯一事務部門で紗也華を可愛がっていた入社5年目の山本という先輩は先月から産休に入っていて)
(山本と同期で仲が良く、同じように紗也華を何かと気に掛けてくれていた如月という研究員は9月から外国の研究機関へ共同研究で赴任していて)
(何となく紗也華は浮いた存在になっていて相談できる同性の社員はいない状態になっていた)
「男との俺には言えない話?」
……ちょっと無理…………ですね。
(なんとか聞き出そうとした研究員であったが聞き出すことは出来ず、珍しく雑談をしながら食事をし終えると途中まで戻り途中で別れて)
(事務部門のある部屋へと紗也華は戻って行った)
……今日はジムへ行くつもりだったけど、疲れたし真っ直ぐ帰ろう。
(定時に仕事を終えた紗也華は更衣室の自分のロッカーの前で独り言ちしながら着替えて、持ってきたスポーツバッグを置いて帰宅の途へ着いたのだった)
【私物で置いておいて欲しい物とかはありますか?】
【机の引き出しには薄く派手で無い色のリップとリップクリーム、ハンドクリームなどを置いてあったり】
【ロッカーには他にバレッタやヘアバンドと昼休み更衣室の中で休むための猫のぬいぐるみ型抱き枕(小さい物)程度を置いておこうと思ってます】