魔族たちの世界は弱肉強食である。
魔人王の下に、貴族階級の上位魔族たちが封建体制で使えているとはいえ
強い魔人ほど弱い魔人がスキを見せれば、その領土を奪い去る。
労働資源である人間との融和を唱えたヴェスパが領内の騎士たちと軋轢を起こしているすきに
近隣領主による侵攻が行われ、ついにはヴェスパが治める城塞都市までが占領されてしまう。
「まさか、武力ばかりで内省がおろそかと言われた貴殿に私の街が奪われるとは思わなかったよ」
自らの領主としての椅子に座る男魔人の前で、200を迎えるか否か(人間でいえば10代後半から20程度)のヴェスパは、両腕に魔力封じの手枷をつけられて引き出された。