15.
あれから和雄は忙しい日々をおくっていた。
仕事や金策に追われる毎日だった。
母も仕事の合間を縫って父の見舞いに行っているようだったが、
すれ違う日々でろくに顔を合わせることはなかった。
あの男には提案を受けないことを伝えたが、ごくあっさりと了解された。
もう少し母に固執するのかと思っていたが、
すんなりと身を引いたのでやや拍子抜けした。
返済期限の延長なども反故にされることもなかった。
しかしながら、ある程度の金額が必要なのは変わりなく、
和雄は金策に奔走し続けた。
そんなある日、いつも通り夜遅くに帰宅した和雄を美咲が待っていた。

「ただいま……」
「あ……、おかえりなさい……」
「どうしたの? こんな夜遅くまで起きてて」

普段は夜遅くなる和雄を待たずに、先に寝るように言ってあり、
美咲もそれに従っていた。

「ちょっと……、お話があって……ね……」