僕は都内にある私立中学の2年生です。
再来年は高校に進学しますが試験などはなくエスカレーター式で大学まで進学できるんです。
そんな僕は今から8年前に付属の小学校を受験して入学しました。
お受験のときの僕の成績は塾の中でも下の下で、一生懸命勉強していたのですが成績はあがらず、
塾の先生からは無理しないでお受験を諦めたらどうかと言われていたようです。
でも僕が一生懸命頑張ってる姿を見て母が先生に頼み込み、そのとき先生が紹介してくれたのが今の学校でした。
お受験の日、テストのことはほとんど覚えていないのですが、面談のことだけはよく覚えています。
担当はなんと学校の理事長でした。
面接官が理事長ということもあり、僕はとても緊張していたのですが、質問らしい質問はほとんどなく、
覚えているのは「一人っ子かい?」って聞かれて「はい」と答えたことくらいです。
そんな中、今でもよく覚えているのが母が聞かれた内容です。
「お母さん、私としては次の子も是非ウチで預かりたいと思ってるんですよ」
さっきボクが一人っ子だって言ったのに聞いてなかったのかなと思っていると、
理事長は母の手を握って言いました。
「お母さん、わかりますよね、わかりますよね」
母はしばらく考えている様子でしたが、そっと僕のほうを見て言いました。
「拓海、この学校入りたいよね」
何でそんなことを聞くのか不思議でしたが、もちろん僕は「うん」と答えました。
すると母はどこか憂いのある笑顔を見せ、そして理事長に応えました。
「どうか、よろしくお願いします」

そして僕はこの学校に合格しました。一生懸命勉強したかいがありました。
やっぱり最後は努力したものが勝つんです。
その後、僕が小学校に入学するとすぐに母のお腹に赤ちゃんができて、理事長の言った通り、なんとそのとき産まれた弟も同じ小学校に合格したのです。
理事長ってすごいな、なんでもわかっちゃうんだと、僕は今でも理事長を尊敬しています。