01.
「冷えてきたな……」

とっぷりと陽が暮れて、ひんやりとした空気が道弘の頬を覆ってきた。
先ほどまで空を茜色に染めていた太陽に代わり、
参道の両側に等間隔で置かれた篝火が境内を照らしている。
その周りに村人たちが立っていた。
屋台などは無い。
山深いこの村までは屋台を出すテキ屋などは足を運ぶことがなく、
村人たちが酒や料理を振る舞うテントが一つあるだけだった。

「そろそろ来るぞー」

暗くなった神社の境内で誰かが大声で呼びかけた。

「お、来たみたいだな」

遠くからシャンシャンと鳴る鈴の音に混じって掛け声が聞こえ始め、
だんだんと近づいてきた。

「そいやっ!」
「「「そいやっ!」」」
「そいやっ!」
「「「そいやっ!」」」
「そいやっ!」
「「「そいやっ!」」」

神輿が鳥居をくぐり、篝火に照らされながら参道を進んでいく。
神輿を担いでいるのはまだ十代前半の少年たちだった。
皆、褌をきりりと締め、お揃いの紺色の法被を羽織って威勢良く神輿を担いでいる。
その少年たちに混じって一人の女性が担いでいた。